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キャッチャー
【母子相姦 官能小説】

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キャッチャー-1

幼い頃からの夢を成就した彼はプロ野球選手となった。
ポジションはキャッチャー。
ただし彼は入団してからずっとレギュラーではなかった。
今から10年前に入団した時点で既に常勝となっていたチームに彼が加わったのはオーナーのほんの気まぐれからだった。
彼がレギュラーをとれる可能性はまったくといっていいほど、なかった。
彼の打撃は悪くなかったが相手があまりにも悪すぎた。
レギュラーは不世出の強打者で、毎年60本ものホームランを放つバケモノだった。
彼が最も自信を持つ守備でも劣っていた。
レギュラーに比べ、彼が上回るものは肩だけだった。
彼はレギュラーを取れないまま既に10年控えを続けてきた。
10年間で残した成績はほとんどが代打だ。
通算で178試合、31安打、4本塁打、16打点、0盗塁。
そのキャリアのほとんどを1軍で過ごしながら、彼が残した成績はたったそれだけだった。
レギュラーは頑健で、あまりにも高い壁だった。
強打者でありながら、バットコントロールは柔らかく巧みで、守備についてもその頭脳の回転の速さは球界でも並ぶ者がない。
レギュラーは日本球界の至宝だった。
彼は自分より1歳年上の絶対的レギュラーの背中をどう思いながら見ていたのだろう?

彼は大阪府吹田市に生まれた。
父親は顔も名前も知らない。
母子家庭の決して恵まれた暮らしではなかったが、幼い頃から彼は人並み外れた野球の才能を発揮し、地区のリトルリーグでは知らない者はいなかった。
プロ野球に進む者のほとんどがそうであるように、彼もまた四番でエースとして少年時代を過ごした。
高校の時になってようやくキャッチャーに転向したが、その強肩、野球センス溢れる打撃は評価が高く、高校時代に甲子園に二度出場する内に瞬く間に彼は注目の的となった。
だが彼がドラフトにかかったシーズン、注目されたのは大学からプロ入りしたとある一人の投手だった。
160kmは出るという正真正銘の怪物投手だった。
その大卒投手に6球団が競合したことでその年のドラフトはにわかに荒れだした。
通常の年なら高卒キャッチャーである彼を指名するのは大抵なら下位指名だろう。
だが、お目当ての大物投手を逃し、外れ一位も奪われたある球団のオーナーは頭に血が上り、外れの外れ1位に彼を指名したのだ。前年に指名した20年に一人の逸材といわれるキャッチャーを擁しながら。

彼は既に28歳になる。
年棒は2200万円。
長年1軍で二番手キャッチャーをしている選手としては平均的だろう。
彼はこのままキャリアを終える自分を何となく想像するようになっていた。
後、数年経てばおそらく自分は二番手捕手でもいられなくなるだろう。
そしたら球団職員かスカウトか‥球団からもそう言われている。
だが、彼はここに来て選手としての自分に賭けてみたい思いに駆られていた。
彼はプロに入ってからいまだ一度もスタメンで公式戦に出た事が無かった。
ただの1度も消化試合ですら1回もなかった。
経験が物をいうポジションでありながら守備についた事が限られていたのは悲劇だった。
レギュラーとの大きな差はますますどうしようもないほど広がっていった。
そして彼は契約更改の席で球団社長(兼任オーナー)にトレードを申し出た。
そのオーナーこそ10年前ほんの気まぐれで使う機会もまずないくせに自分を獲得した男だった。
独裁者と呼んでも差し支えない。オーナーは常勝となった自分のチームが勝ち続けるのは自分のおかげだと自負している。
このチームに選手を集め、球場を大きくし、施設を建設してファンを集め、全てを作り上げたのは自分。だから監督の采配にも選手起用にも平気で口を出し続けてきた。自分のお気に入りの選手を監督が変えることなど決して許されなかった。
オーナーは監督たちにどちらが雇い主なのか思い知らせるために毎年監督を変え続けることさえした。そして実際その間もチームは毎年優勝し続けた。

レギュラーとしてやりたい気持ちはとてもよく分かる。
それでもチームを出ようとしている判断は間違っていると周囲の人は言った。
絶対にあのオーナーに逆らってはいけない。
他球団でも球界にいられなくなる恐れがある。
何よりこのままおとなしく引退さえすれば彼はまず間違いなく球団内に残れるのだ。
今更出て行って何になる、プレーできるであろう年齢を考えたら全ての不満を飲み込んで残る事が最善の手だった。
それでも彼は出て行こうとした。

彼は焦っていた。
幼い頃からの夢であるプロ野球選手になり、スターにはなれなくても同年代の若者よりはずっと高い給料はもらってきた。
女手一つで自分を育ててくれた母への恩返しもそれなりに出来たはずだと思う。
あれは入団2年目、初めて出場した日本シリーズでのことだ。
初戦から3連勝と追い込みながら2連敗し、相手に勢いが奪い返されそうだった。
彼はその第六戦で決勝打を放った。
それは日本シリーズ初出場で初打席だった。
彼の糸を引くような打球は、スタンドにライナーで飛び込んだ。
彼はその打球を、ずっと今も追い求めている。
正確にいえばその打球の先にあるものを追い求め続けている。

改めて書き記しておこう。
彼の名前は高坂行光。
28歳、職業はプロ野球選手。ポジションはキャッチャー。
独身で年棒は2200万円。
プロ野球選手になるような者は大抵そうであるように彼もまた天才野球少年だった。その輝きはプロになり、1軍でプレーするようになってぐっと薄れて見えたが、それでも彼は今もプロの1軍でプレーし続けている。
常勝球団で長年控え捕手としてプレーしてきた彼がトレードを志願した事はマスコミでもちょっとした話題になった。
彼にも選手としての自分を試してみたいという欲があったのだ、とどちらかといえば好意的な見方をされている。




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