第四章 理由-1
「おや、自習してるんだ。感心だね。」
テツヤとヒロキが私の部屋にいきなり入ってきた。壁いっぱいにプロジェクターが映し出していた動画サイトの画面を消そうと焦ったが、操作に慣れていないため間に合わなかった。私は開き直ることにした。
「ええ、あなたたちにされるかもしれない事を前もって知っておけば、対処の役に立つと思ったんです。」
「なるほどね。でも、スカートの中に手が入っているように見えたのは気のせいかなあ。」
「気のせいです。」
本当は入っていた。動画を見ているうち、ついそういう気分になってしまったのだ。でも、触ってはいない。あと少しの所で彼らが入ってきたから。
「じゃあ始めよう。もうわかっただろ、君がまず何をすればいいのかを。」
私はテツヤを睨みつけながら、上着のボタンを外していった。
「そうそう、しっかりお勉強の成果が出ているじゃないか。」
「どうせ脱がすんですよね。腕を捩じりあげたり首を絞めたりしてでも。だったら…。」
悔しい。いや、その前に恥ずかしくてたまらない。だけど、少しでも手荒な真似をされないためには、こうするしかないのだ。
しかし、一枚、また一枚と脱ぐたび、私は自分の動悸は高まり、呼吸が浅く早くなっていくのに気付いた。何だこれは?いやいや、そんなの、これから自分になされるであろう事にたいして怖がっているだけに決まっているじゃないの。でも何だか、もうすぐ好きな人に会える時の気持ちに似てる。ヘンな感じだ。
テツヤもヒロキも、そんな私をじっと見ている。ついに上下の下着だけになったところで急にテツヤが言った。
「うーん、今日はやめとこうか。そんなに自分からスイスイ脱がれちゃったら、なんだかつまらないよ。」
な…ばかな。こんなに恥ずかしい思いを抑えて脱いでいるのに。
「やーめた。脱いだもの着ていいよ。」
私は動けなくなった。せっかく助かったんだから、さっさと着ればいいのに。なぜか躊躇した。
「どうしたの?もしかして脱ぎたい?」
「そんなわけ無いじゃないですか。着たところで強引に脱がすんじゃないかと警戒してるんです。」
「なるほどねえ。その手があったか。つまりこういうことだね。今脱いだ物を着たら乱暴に全部剥ぎ取られるかもしれない。でも、自分で残りも脱いでしまえば、少なくともその時点までは何もされないで済む。もちろん、着たら乱暴される、とは限らないし、脱いだから乱暴されない、とも限らない。どっちを選んでもその先のことは分からないんだ。だとしたら、君はどっちを選ぶかな?」
私は迷った。どちらにしても非道い事をされる可能性はある。しかし、さっきテツヤはこう言っていた。自分で脱がれたらつまらない、と。ならば、脱いでしまった方がより安全度が高いのではないだろうか。
背中に手を回してホックを外し、躊躇いなくブラを取った。ショーツに手を掛け、足を片方ずつサッサと抜いた。
「さあ、どうするんですか?」
テツヤは私のカラダをジロジロ見ながら言った。
「ほう、そっちを選んだか。自分から脱いじゃうなんて、よっぽど見られたかったんだな。全部丸出しにして、ね。」
「そんな…。違います。見られたくなんか…。」
「なんだ、勘違いしちゃったよ。がっかり。だよね、俺に非道い事をされないために脱いだんだよね。」
「ええ、そうです。だからもう部屋から出て行ってもらえませんか。」
「それでもいいんだけどね。せっかく脱いでくれたのに何もしないのもねえ。」
甘かった。この男がそんなに単純な事を考えるはずがない。
「そうだ、こういうのはどうだろう。そこの椅子に座って、茂みに隠れて見えにくいところをよく見せてよ。」
「え…。」
テツヤは両手を広げて見せた。
「こっちからは何もしないからさ。君が自分の意志で足をいっぱいに広げてそこを見せるんだよ。そうしたら痛くないだろ?死にかけたりもしない。」
先日の恐怖が蘇ってきた。自分がこんなわけの分からない所で消えてなくなるかもしれない恐怖が。
「どう?」
全部脱いだうえに、一番恥ずかしいところまで自分から見せてしまうなんて。ありえない。
「あの。」
「何?」
「見せなかったらどうなるんですか?」
テツヤが苦笑いした。
「訊く?それ。答えてもいいけど。
「いえ、結構です。
選択の余地なし、か。
部屋の中に置きっぱなしになっているあの忌まわしき椅子の方を見た。腕を折るぞ、殺すぞと脅され、自分ですることを強要された。私はそれに応じ…もう思い出したくもない。
ゆっくり歩いて椅子に座った。テツヤも私の正面に移動した。目をつぶった。体が震えてしまう。必死に耐え、少しずつ足を開いていった。
「おお、いいねえ。いい眺めだ。とても綺麗だよ、君のそこは。」
「やめて…。」
「既にしっかり湿ってるねえ。さっきの自習の効果かな?」
「やめて下さい。そんなこと、言わないで…。」
「否定はしないんだ。」
彼の言う通りなのだ。動画で気分を煽られ、私はすっかり出来上がっている。
「可愛らしい突起も、しっかり顔を出しているじゃないか。」
私は何も言えない。こんな状態になっているのは動画のせいばかりとは思えないからだ。恥ずかしくてたまらないことをさせられているのに、なぜ私は…私のカラダはこんなに…火照るのだ。