第二章 恐怖が足を-2
「ガフッ…」
後ろから首を絞められた。毛深く太い腕が巻き付いている。ヒロキだろう。苦しさから逃れようと思わず上げた左手を掴まれ、背中の方へ捩じりあげられた。唯一自由に動かせる右手で首を絞めている腕を外そうとするが、ビクともしない。
「ははは!生意気な態度するからそういう目に会うんだ。さあ、ここで君には三つの選択肢がある。一、自分でショーツを脱ぐ。二、左腕をへし折られる。三、首を絞められて死ぬ。選びなさい。」
死ぬ?私が死ぬ?何よそれ。死んだらどうなるの?私の全てが消えてなくなるの?そんな…イヤ、そんなのはイヤよ!
「グ?」
死の恐怖にパニックを起こしているうちに、テツヤは私のショーツを一気に引きずり下ろした。
「待ってられないよ。それに、腕を折られるのも死ぬのもイヤだろ?なら答えは決まっている。」
私は…ついに何も身に着けていない丸裸にされてしまった。
「おや、なかなかよく茂ってるね。もっと控えめなのかなーって思ってたんだけど。」
私は慌てて足を閉じた。
「ダメだよ、閉じちゃ。さ、もっと開いて。奥まで見せてよ。」
そんなこと出来るわけが…
「グッ…」
激痛が左腕に走った。それは緩むことなく続いた。
「ほらほらあ、ダメだってば。折れちゃうよ?それがイヤなら足を開きなさい。」
「ウウ…」
気が遠くなりそうな痛さだ。でも本当に折られたらこんなものではすまないだろう。私は痛みと恐怖に耐えきれず、少し足を開いてしまった。
「そうそう、出来るじゃないか。」
捩じられる力が弱まった。しかし、私が足を閉じかけると、また激しい痛みが襲ってきた。それから逃れるためには、再び開くしかなかった。
「もう分かったね。逆らえば痛い目をみる。言うことを聞けば痛くない。シンプルだろ。」
いつの間にか私の目には溢れそうなぐらいの涙が溜まっていた。腕に走る激痛、死ぬかもしれない恐怖…。それらから逃れるために、今の私にできることは一つしかない。椅子の座面の形から考えて、足を開けば何一つ覆い隠すもののない状態で股間を曝すことになる。恥ずかしくてたまらない。悔しくてたまらない。でも、そうするしか…。私はゆっくりと足を開いていった。
「そうそう、理解が早いね。」
開けば開くほど、見られたくないところがどんどん露出していく。それをテツヤは覗き込んでいる。だから私はためらう。しかし、動きを止めると、容赦なく腕に痛みを与えられた。
「だいぶ見えてきたね。チョコンと可愛らしい突起、ブヨブヨの崖っぷち、その下はヌラヌラと湿ってテカる斜面へと続き、谷間を下ると…」
見られている。全部見られている。私は思わず足を閉じてしまった。
「グフゥ…」
首を絞められた。死への恐怖が羞恥に勝り、両足を全開にした。
「死ぬ?いっぺん死んでみる?今度逆らったらホントにヤっちゃうかもよ。」
首も左手も楽になった。でも、足を閉じる気にはなれない。
「それにしても、君ってなかなか恥知らずだね。大股開いて全部見せちゃうんだから。」
「違います。強制されてしかたなく…」
「そう?腕を折られるとか死ぬとか、他にも選択肢はあるよ。なのに君は足を全開にして見せつけてくる。自分の意志でそうしてるじゃないか。」
「違います、違いますってば…。」
とうとう涙がこぼれた。悔しくて恥ずかしくて。でもどうすることも出来ない。
「そうだ、もう一つ君にやってもらいたいことがあるんだ。断ってもいいよ、死ぬけど。」
「…なんですか。」
私は涙声で訊いた。
「どうして右手だけフリーにしてあるか分かる?してもらうためさ、自分でね。」
「何をするんですか。」
「とぼけるんじゃない。君が自分でしてることは調査済みだよ。現場を見たわけではないけど、確実な情報を得ている。さあ、しなさい。」
「…。」
上目遣いに睨んだ。
「死ぬ?」
私はゆっくりと自分の右手を口に運び、中指を含んでしっかりと唾液を絡ませた。それを股間に移動させ、茂みの中で少しだけ顔を覗かせている小さな突起に触れた。
「ん…。」
「ほう、感じやすいんだね。ファーストタッチでもう声が出た。」
ゆっくりと指を動かす。感じる。ジンジンと。
「これで…う…いいですか?」
「いいよ、続けて。君がしたいように。」
「したくなんか…あ…。」
一番見られたくない部分を見せるよう脅迫され、こんなことまでさせられているというのに、私のカラダは与えられる刺激に正直に反応してしまっている。知らず知らず息が荒くなってきた。指の動きが徐々に大きくなり、それに呼応して快感が増していく。見られている。テツヤはじっと私の指の動きを見つめている。なのに、私の指は動き続けている。私は快楽を貪り続けている。
「いつもそんなふうにしてるんだね。可愛いよ。」
見たければ見ればいい。こんな非道いことをされている私を慰められるのは私しか居ないのだ。今、私に出来るのはこれしかないのだから。
「あ、ああ、あはぁ…」
下腹部の痺れがジワジワと全身に広がっていく。私はもう、自分が自分に与える快感にしか意識を向けることが出来ない。
「ああ!あ、あ、あ、はぁあぁ!」
テツヤと目があった。
「見て、見て!私、自分の意志でここにこんなことをして自分を慰めているんです。あなたたちに強制されたからじゃありません。これは自分の意志ですからね、いうことなんかききません。ききませんから!あああぁあはぁあぁあーーーーー!」
私は全身を強張らせて小刻みに震えた。快感が全身にくまなく行き渡り、心をとろけさせた。やがてその波は静かに引いていき、心地よい疲労感だけが残った。いつの間にか首も左手も自由になっていた。