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さがしもの 〜 custom-made virgin
【調教 官能小説】

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第三章 モヤモヤと施設と-1

 「お食事お持ちしました。」
 ノックに続いてユキノさんの声がした。
 「おなかすいたでしょう?お待たせしました。」
 なかなか食べる気になんてならない、と言いたいところだが、確かにおなかはすいている。
 テーブルの上に置かれていく食器には、どれも美味しそうなおかずが乗せられていた。おなかが鳴ってしまった。
 「ほら、おなかすいてるじゃないですか。ゆっくりどうぞ。」
 私は立ち去ろうとしているユキノさんに声をかけた。
 「あの…。」
 「はい?」
 「あなたも誘拐されたんですか?」
 「誘拐?違いますよ。ここにいる皆さんの食事などのお世話をしているだけで。お給料いただいて働いてるんです。」
 「皆さん、ということは、私の様に誘拐された人が他にも居るんですね?」
 「さあ。ここで暮らしている女性は何人かいらっしゃいますけど。誘拐って…。」
 私はテーブルの上のナイフを掴み、飛びかかった。
 「とぼけないで下さい。あなたも一味なんでしょ?さあ、一緒に来て。部屋から外に出ましょう。」
 「部屋から出たければ、担任の先生にそう言えばいいじゃないですか。それに。」
 「え?」
 視界がクル、っと回り、私はあっという間に床に転ばされていた。
 「ここに来たばっかりの方はたいてい同じようなことをされるんですけど、無駄です。私、元は警察官で、複数の格闘技の有段者ですから。」
 私は茫然とするしかなかった。女だとみて甘く考えてしまったようだ。刃物で脅せば、と。
 「これからもよろしくお願いしますね、刃物は無しで。では失礼します。」
 入れ替わりでテツヤが入ってきた。ユキノさんは軽く会釈して出て行った。
 「やあ、君もか。おとなしそうな顔してるのにね。」
 「そろそろ教えてもらえませんか。ここがどういうところなのか。」
 立ち上がりながら訊いた。
 「ふむ、そうだね。頃合いか。」
 私はテツヤの口から発せられる言葉に耳を傾けた。
 「まず、どんなことをされるかはもう分かったよね?そして快適な暮らしが出来るということも。大雑把に言うとそれだけなんだけど…この施設内のこと、もっと知りたいよね?」
 「はい、もちろんです。」
 「じゃ、これからは自由に部屋を出ていいよ。建物の外にさえ出なければ好きにしていい。いや、出たいと思ったら方法を考えてみるのもいいかもしれないね。ということでどうかな?」
 「え、あの…部屋から出ていいんですか?」
 「いいよ。オレが説明するより、自分で見た方がよく分かるんじゃないかな。」
 あっさり過ぎて気味が悪い。
 「一つ質問いいですか?」
 「どうぞ。」
 「どうして今までは部屋から出してもらえなかったのに、急に出てもよくなったんですか?」
 「そうだな…もし最初から部屋の鍵が掛かっていなかったら、君はどうしてたと思う?」
 「部屋から出て出口を探すでしょうね。」
 「そう。だからこの施設の中を走り回る。メンドクサイじゃないか、いちいち捕まえるのは。」
 「この後私が走り回るかもしれませんよ。」
 「しないね、もうしない。だって、逆らえば痛い目を見るだけだと学習したからね。」
 確かにそうかもしれない。
 「と、いうわけだ。ま、走り回らないで探検してよ、そこそこ広いけど。」
 テツヤはそれ以上何もしないで出て行った。絶対また非道い事をされると思ったのに。彼に対して感じる苛立ちのようなモヤモヤだけが残った。何だこれは?まあいいか。今はそれより部屋の外のことを考えよう。
 ドアに手を掛けて引いた。それはあっけなく開いた。
 淡いピンクの壁、白い天井、程よく柔らかい素材の水色のマット。廊下は、落ち着いた穏やかな空間だ。とてもあんなことが行われている施設だとは思えない。
 正面には木製の洒落た手すりが左右に伸びており、その向こうには大きな空間が広がっている。吹き抜けのようだ。手すりの中央からやや右寄りのところから、優雅な逆S字を描いて階段が降りていく。
 手すりの反対側、つまり私の部屋がある方は壁になっていて、幾つかのドアが並んでいる。おそらく、それぞれの部屋の中では…。考えるのはやめておこう。
 深呼吸を一つして廊下へと踏み出した。不思議なものだ。鍵が掛かっていたときはあんなに出たくてしょうがなかったのに、今は部屋の中に留まっていたい気持ちの方が強い。出るのが怖い。でも、私には知らなければならないことがたくさんあるはずだ。さあ、行こう。
 右へと進んだ。階段に近づくと、女性たちが楽し気におしゃべりしている声が聞こえてきた。私とは立場の違う人たちが居るようだ。とてもじゃないが、笑う気になんてなれない。
 恐る恐る少しだけ降りてみた。すると、階下でソファーに座って談笑する三人の女性たちが見えてきた。女の子、と言った方がいいぐらいの年齢だろうか。
 S字カーブの最初の頂点あたりまで降りた私は、そのまま降りていくべきかどうか迷った。だって、何者かも分からない人たちの中へ自ら入っていくなんて、危険ではないだろうか。もしかすると、また非道い事をされるかもしれないのだから。
 その時、彼女らの声がふいに止んだ。


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