第一章 痛いのに指が-5
回答は得られそうにない。いや、そんことを知っても脱出できなければ意味がない。今はもっと現実的な情報が必要だ。
「ここで暮らす、って言いましたよね。」
「そうだよ。」
「とりあえず、の話なんですけど。食事はどうなるんですか。」
「そうか、言い忘れてたね。心配いらないよ、ご飯はちゃんとあげる。冷蔵庫の中の物もご自由に。レンジにポット、コーヒーメーカー、食器類。たいていの物は用意したつもりだけど、もし足りない物があったら遠慮なく言ってね。それから、バスとトイレはそっち。クローゼットには服と下着が用意してあるから好きなのを着ていいよ。もう一つのクローゼットに布団や毛布、タオル類がある。後は。」
テツヤは小さなテーブルセットの上に置かれたリモコンを操作した。天井から壁に光が投射された。
「ごらんの通り、プロジェクター型のモニタがある。ただし、ネットやテレビは見れないよ。外の世界はもう君には無関係だからね。そのかわり、有料動画サイトが見放題!アダルトもロックかけてないし、ゴニョゴニョのやつも見れちゃうようになってるから、タップリお楽しみ下さい。」
いつだったか遊びに行った、ヒロカちゃんのお兄さんが一人暮らししてる部屋よりよっぽど豪華だ。お兄さんは出かけていて会えなかったけど、普通は私たちの年頃の女の子が接することの出来ない物がたくさんがあって、二人で興奮しながらおしゃべりしたのを覚えている。もしかしたらお兄さん、そのために部屋を空けてくれたのかもしれない。
「ずいぶん快適なお部屋をご用意いただいたんですね。」
イヤミを言ってやった。
「ええ、大切なお客様ですから。いや間違えた、ようやく手に入れたおもちゃだからね。良いコンディションを保ってもらいたいんだよ。」
おもちゃ…。さっきみたいなことをこれからもされ続けるというのだろうか。
「じゃ、今回はこれで。あ、そうそう、この部屋に監視カメラは無いよ。ナマじゃないとつまらないからね。お疲れさま。」
テツヤたちは部屋を出ていった。後を追って出られないかと思ったが、ヒロキにブロックされた。
私はベッドに倒れ込んだ。訳が分からない。疲れた。こんな事があったんだから当然だ。とりあえずお風呂に入ろう。さっぱりすれば何かいい考えが浮かぶかもしれない。
お風呂の後に着るものを選ぼうとクローゼットを開けた私は目を見開いた。
「すごい…。」
私はお金持ちのお嬢様じゃない。普通の家の女の子だ。だから好き放題に服が買えるわけではない。しかも父はお金に厳しく、あまりお小遣いをくれない。それでも私だって女の子だから、欲しい服はいっぱいある。お気に入りのブランドも。それが今、私の目の前いっぱいに吊り下げられ、選び放題なのだ。
「きゃーっ!どれから着よう。うーん、迷うわあ。これかなあ、こっちもいいなあ。選ぶのに困るよ、どうしよう。まあ、毎日一着ずつ着ればいいや、毎日…。」
そこで現実に戻ってしまった。毎日着る、という事は、さっきみたいなことをされ続ける事を意味する。目の前のパラダイスが、一気に色褪せた。でも、どうせ何か着るんだから、好きな物にしよう。選び抜いた一枚を取り出した。下着の引き出しにも、普段の私なら小踊りするほどのラインナップなのだが、なんだが気力が失せた。どうせ脱がされるんだろうし。だよね。今日は見られただけだったけど、近いうちに脱がされて中を見られてしまうのは避けられないように思う…。
「さあ、お風呂入ろ!先のことはまた先に考えればいいや。」
自分を元気づけるようにそう言って、バスルームに入った。
「うわ…。」
これまたなんと豪華な。全身を伸ばしても手が届かないくらい広い湯船。ダンスが出来そうな洗い場。高級シャンプーやボディソープ。ん?椅子はU字型のヘンな座面をしているけど…座り心地は悪くなさそうだ。
シャワーを出してみた。最初から適温で安定している。しかも、水滴が非常に細かくて気持ちいい。
「う…。」
お湯が胸に当たったところで声が出てしまった。あれだけ痛めつけられたのだから。左の乳首を確認すると、はっきりと歯形が残っている。撫でてみた。
「つっ…。」
当たり前だが、凄く痛い。だが、いたわるように撫で続けているうち、不思議な感覚にとらわれた。痛いのとは別に、なんというか…。
先端以外もジーン、と痺れている。そっと手で包み込むようにさすった。さっきから続いているヘンな感じが強くなってきた。気がつくと、右手で左の乳房を撫でながら、左手がお腹の下の方へとゆっくりと降りていき、やがて茂みの中に潜り込んだ。
「あれ、私なんでこんなこと…。」
左手の指先が、敏感なポイントを探り当てた。
「ん…。」
指が動き始めた。私は自分の息が荒くなっていくのを感じていた。
「なんなの、どうして私、胸が痛いのにこんな事を。」
自問自答して一つの答えにたどり着いた。
「あ、そうか、さっきあれだけ非道いことをされたから、自分で自分のカラダをいたわっているんだ。だから、このまま続けていいんだ。」
日常非ざる状況に強引に叩き込まれ、混乱が思考を放棄させてしまったのだろうか、欲望のままに私の指の動きが徐々に早くなり、膝がガクガクし始めた。立っているのが辛くなり、壁にもたれてしゃがんだ。気が付くと大きく足を開き、自分の左手で自分を激しく慰めていた。グリグリ、グジュグジュ、ジュボジュボ…。
「ああ、はあっ、あううぅ…。」
お風呂の中に響く、長い余韻を伴った自分の悦びの声にさらに情動を掻き立てられた私の指はもう止まらない。執拗なほどに自分を可愛がった。