第一章 痛いのに指が-3
意識を失う前のことをぼんやりと思い出し始めた頃、静かにドアが開いて知らない男の人が入ってきた。私よりはだいぶ年上のようだが、オジサンとまではいかない感じだ。
「やあ、気がついたようだね、なんていうパターン通りの初対面はいかがかな。」
にこやかで話しやすそうな人だ。スポーツでもやっているのだろうか、しなやかな体に短い髪がなかなか爽やかで、私は好感を持った。
「あの、ここは…。」
「うーん、一言で現すのはとても難しいんだけど。まあ、学校みたいなもんかなあ。」
「学校…ここは保健室ですか?」
「いや、今日から君の部屋だよ。なるべく快適に過ごしてもらいたいから、不備があったら遠慮なく教えてね。」
「私の部屋?」
「そう、君はここで暮らすんだ。そして、いろんな事を学ぶ。」
「あの、何をおっしゃっているのかよく分からないんですけど。」
「だよね。ま、簡単に言うと、君は誘拐されたのさ、僕らにね。」
「ゆ、誘拐!」
「そ。」
「身代金を要求するんですか。」
「それはどうかなあ。ごく普通の平凡な家で生まれ育ったごく普通の女の子だろ、君は。失礼なことを言うようだけど、たいした身代金は期待できないよね。だからお金じゃなくて、君自身に用があるんだよ。」
「私?」
「目覚めたばっかりのところを申し訳ないんだが、さっそく始めるとしようか。そうすれば分かるよ、君を誘拐した理由が。」
彼がゆっくりと近づいてきた。私は反射的に一歩下がった。が。
「え?」
いきなり後ろから羽交い締めにされ、仰向けに床に引き倒された。背中の方から伸びてきた誰かの足が私の膝にひっかけられ、そのままグイ、っと大きく開かれた。つまり、私は床の上で仰向けになり、両手を動けなくされたうえ、限界まで両足を開かれて股間を曝している。
「あ、そうそう、俺はテツヤでそいつはヒロキ。君の担任の先生だ。よろしくね。」
「何なの…。」
私は訳の分からない不安に、ブル、っと身震いした。
「ふむ、普通の女の子の普通の下着だね。だからこそ、そそられるというものだ。」
テツヤと名乗った男には、私のスカートの中が丸見えになっているのだ。
「見ないで!見ないで下さい、なんてことするんですか。」
「淡いブルーの綿の布に控えめなフリルとリボン。たまらないねえ。しかも、それだけ大股広げると、何かはみ出してるよ。黒くてカールしてる…」
「やめて下さい!どうしてこんな事を…。」
「どうして、か。それはとても簡単かつ難しい質問だ。君はおなかが空いたら食べるだろう?同じだよ。俺はオンナで遊びたいからそうしてるだけさ。」
恐怖で震えが止まらない。そんな私を見つめながら、テツヤが片膝を着き、両足の間に顔を近づけてきた。
「何?何ですか…。」
舌を伸ばせば下着の中央に届きそうな所まで寄ってきた。
「やめ、やめ…」
「すー、はあー。」
至近距離まで鼻を近づけると、私の匂いを嗅いだ。
「いいねえ、やっぱり若いオンナの匂いは。今日は体育があったから、なおさらスパイスが利いてる。サボらないでもっとまじめにやってくれてれば、さらに良かったんだろうけどねえ。」
「…なんてことするんですか。」
私の声は掠れてしまっている。
「料理には三つの楽しみがある。匂い、見た目、味。今のは匂いね。次は見た目を楽しむとしますか。」
いったん顔を離すと、手のひらで私の太ももの内側を下着に向かって撫で上げてきた。
「イヤ…イヤ、イヤ、イヤぁ!、来ないで!」
不快感が這い上がってくる。だが、もがいてももがいても逃げられない。
「透き通るように白く、吸い付くようにしっとり滑らか。幼すぎず老けるには早い。食べ頃だ。」
ショーツに手が届いた。脱がされる!そう思ったとき。
「じゃまだな、これ。」
「え…。」
制服のスカートのサイドのホックが外され、ジッパーが下げられた。そしてそのままビリ、っと引き裂かれたスカートはただの布切れになって投げ捨てられ、下着を隠す用を成さなくなった。既に下着が丸見えになっていたとは言え、スカートをとられてしまうとさらに恥ずかしさがこみ上げてきた。
「せっかく可愛いスカートなんだけどねえ。あとで違うの着せてあげるから、許してね。これもね。」
さらに、制服の上着の裾を両手で掴まれ、ふんっ、という声とともに左右に乱暴に引っ張られた。ボタンが下から順にブチブチブチ、っと弾け飛んでいった。
「このまま袖を抜くのは無理だな。ヒロキ、いったん手を放してくれ。」
チャンスだ。両手が自由になれば、テツヤを突き飛ばしてヒロキの足を外し、自由になれるかもしれない。あとは二人が入ってきたドアから逃げて…。
「なんてね。そんなわけないじゃないか。ま、ドアには鍵がかかってるから、どっちみち逃げられないんだけどね。」
読まれている。いや、最初から分かっていて無駄な期待を抱かせ、失望させるつもりだったんだ。なんていう非道い男なんだ。
「そんなに睨むなよ。せっかく可愛い顔してるんだからさあ。シミひとつ無い肌、切れ長の澄んだ瞳、何も塗っていないのに潤いに満ちてふっくらと柔らかそうな唇。前髪を切りそろえたストレートロングも上品さを感じさせる…完璧だ。大人になりきれていない、仄かに漂うオンナの香りがまた堪らないねえ。」
そう言うと、制服と同様にブラウスの裾を掴み、ボタンを飛ばしながら左右に開いた。ブラ一枚の胸が剥き出しにされた。そして、肋骨の上に手のひらが乗せられ、それはゆっくりと這い上がってきた。ブラの下の端を掴まれた。おぞましさに身震いしている私の顔をテツヤがじっと見つめてきた。その時点で、次に何をしようとしているか、簡単に想像がついた。