♠狙われた女♠-6
そして俺は、眉をひそめたまま、小野寺くんの立場を自分に当てはめて考えてみた。
付き合ってもいない松本が、俺の部屋に泊まりに来る……。
刹那、顔が勝手に熱くなり、思わず口を手で押さえる。
やべえ、そんな状況になったら鼻血モンじゃねーか!!
想像だけで勝手に顔がにやけてしまったが、それがきっと一般的な男の反応だと思う。
俺は紳士だし、ましてや相手が松本ならとてもとても恐れ多くて手なんて出せないけれど、もし松本があの大きな瞳で、
『天野くん……抱いて……』
なんて迫ってきたら、いくら俺でも我慢なんてできるはずがない。
まあ、それは行き過ぎた妄想だってわかるけど、リアルに考えたら、泊まりに来るような間柄なら、脈ナシなんてことは全くないと思う。
ならば、俺だったらきちんとケジメとして告白はするだろう。
だけど、この小野寺くんは『付き合ってない』と焦りもなく余裕の顔。
ってことは、松本だけが一方的に小野寺くんを好きなのでは……?
そして突如脳裏によぎるのは松本の寂しそうな顔。
俺はようやく彼女のその表情の原因を理解した。
松本は小野寺くんを好きなのだが、小野寺くんは松本を単なる性欲処理の相手……いわゆるセフレとしてしか見ていなかったのだ。
小野寺くんはかなりモテる。
女の子のお客さんから連絡先をもらうのは日常茶飯事みたいなもんだし、噂では告白もたくさんされているらしい。
そんな彼は当然ながら女友達だってわんさかいて、街で女の子と一緒に歩いていたという目撃談もバイト仲間からしょっちゅう聞いた。
「お、小野寺くん……は、松本と付き合ってないのなら……他にカノジョいるの?」
恐る恐る尋ねてみれば、彼はフフッと意味ありげな笑いを浮かべて、
「いやー、そんなのいないよ」
とだけ言った。