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目覚めの失恋
【熟女/人妻 官能小説】

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きっかけ-1

夫と新婚以来のデートをした翌日はいつも通りに目覚めた。夫もいつもより早目に起きたので、一緒に朝食を食べた。いつもよりも会話が弾んで新婚の時のようだとまでは言わないが、最近ないような朝のひと時だった。夫を送り出した後、自分の支度をしてパートに向かった。いつもの通勤電車であるが、今日は傘の青年を探さなかったし、改札もわざわざ合わせたりしなかった。とても幸せなんだろうなといつもより強くいいきかせて、子供が親離れして二人の時間が増えてきたらセックスレスなんてすぐに解消できるわ、とあまり根拠はないがなんとなく自信がでてきて明るい気持ちになった。いつものようにパート勤務を終えると、パート仲間の吉田さんとランチに行くことになった。娘が夫の実家から戻るのは夜で、昼ご飯を作らなくてもいいので以前から約束していたのだ。駅前のパンの美味しいカフェに入った。テーブル席がちょうど一つ空いていたので、そこに座ろうとした時に、

「あっ、どうも、こんにちは…。」

隣はスーツ姿の男性二人だったけど、席に着くまで背中しか見えてなかったので気付かなかったが、声を掛けてきたのはあの傘の青年だった。今朝、心の中で消えかけていた青年の輪郭が突然出てきて戸惑う。

「あ、その節はどうも…。お昼休憩ですか?」

「そうなんですよ。そちらさんもですか?」

「私達はパートなので仕事終わりに来たんです。」

「そうなんですね。ここ美味しいですもんね。」

何気ない会話を交わした後、吉田さんから知り合い?と聞かれたので、傘の事を説明したらなるほどねと意味深な笑みを浮かべていた。感のいい彼女は私のファッションの変化の原因を察したようだったが、全然そんなんじゃないからと笑って否定しておいた。彼女は注文を言った後、トイレに行ったが、それを見計らってか、傘の青年がさっとメモに何かを書いたあと私に手渡して、

「もう休憩終わりなんで行きますけど、良かったら…連絡下さい。」

と言って席を立って出て行った。私はそのメモ書きを吉田さんが戻ってくるまでにバッグにしまって何事もなかったように、お隣さんはもう行ってしまったわと伝えたのだった。ランチを終えて家に帰ると、一番にメモを確認した。ラインのIDのようなものが書かれていた。試しにID検索窓に入れてみる。斎藤弘樹と表示されたアカウントの画像は紛れもなく傘の青年の顔だった。ドキドキと指を震わせながら追加ボタンを押すと、友達の所に新たに追加された。なんかとてもいけない事をしているような感覚になり、ちゃんとお礼言いたいからラインするだけなのに…と誰かに言い訳するみたいに自分に言い聞かせていた。30分もしないうちに斎藤弘樹からメッセージが届いた。

【登録してもらってありがとうございます。
今朝はそそくさと行かれたので
嫌われたのかと不安でした。】
                     
       【嫌われる?たまたまですよ。
        ちょっと急いでただけですよ。】

【良かった…。佐有里さんを見るのが
通勤の唯一の愉しみだったので。
あ、佐有里さんて呼んで大丈夫ですか?】

       【大丈夫ですよ。弘樹クンて呼んでも
          大丈夫ですか?】

【もちろんですよ。綺麗な佐有里さんに
名前で呼ばれたら超ドキドキですね。】

恋愛から遠ざかっていた私にとって、あまりに新鮮な感覚だった。男性とラインでやり取りする事すらほとんどない私にとって、まっすぐに感情をぶつけられる事は誘惑のシャワーを自ら全裸で浴びているようなものでその心地よさに、理性のタガが外れるのがわかっていながらも自らの歯止めは効かない気がしていた。それからお互いの事を言い合い、やり取りする日が続いた。さすがに娘や夫がいる時は冷静になり、一切スマホを見ないようにしていた。弘樹クンは現在恋人がいないようで、私への気持ちを随所に表してきていた。私は人妻だし、弘樹クンにはもっといい人がいるよとかわしていたが、内心は恋に焦がれる女学生のように嬉しかった。


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