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目覚めの失恋
【熟女/人妻 官能小説】

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そのようないきさつで出掛けてきたのだが、雑誌だけでなくインスタでのコーディネートも参考に数店舗回って7点3万円も購入していた。こんなに時間とお金を服の買い物にかけたのは何年振りだろうか、嬉しくなって、一番お気に入りのコーディネートで帰りたくなり、店舗でタグを切ってもらって着替えた。店舗を出てランチのカフェを探しながら街を歩いてみた。周りの視線をいつもより集めているような気持ちになっていた。願望なだけかも知れない。ふいにあの傘の青年の視線を想像してすぐに掻き消したが、にやけていたのだと思う。

「なんかいいことありました?」

ペンとバインダーを持った、40代後半ぐらいの小綺麗で紳士的な男性に声を掛けられた。

「いえ、その…」

「実はオシャレな方にお声掛けさせてもらって、ファッションアンケートしてるんですが、ご協力願いませんか?」

「あ、もう今から帰るとこなんで…」

「とてもオシャレなんで、是非ともお伺いしたいんですよ。実は謝礼も出るんですよ。お願いできませんか?」

強くおされて困ったが、このタイミングでオシャレと褒めらた上に、散財した罪悪感も少しあり、謝礼がいくらかはわからないけど、少しでも足しになればと、

「まあ、少しぐらいの時間なら…」

と押しに負けて軽い気持ちで引き受けてしまった。都会にしては広いパーキングに止めたワンボックスの車の前に連れていかれ、車内でサッと終わらせますからと後方の広いボックス席に座らされた。乗り込む前に運転席と助手席にアシスタントらしき人達の姿がチラッと見えた。窓と運転席のしきりの所をぐるりと完全にカーテンで覆われて、外の世界とは完全に別空間の部屋のようになっていた。私に声を掛けた男性は石井と名乗り、真横に座りながらアンケート協力へのお礼を口にして、白い封筒を手渡してきた。中を覗いてみると1万円札が入っていて少し驚くと同時になんとなくラッキーかもと思ってしまった。また表情が緩んでいたのかも知れない。

「はじめに下のお名前と年齢を教えて下さい。」

男性にしてはとても艶っぽいいい声で、声に弱い私は少し心拍数が上がり、密室なのに声を張り、誰かに聞かせようとする話し方の違和感を無視してしまっていた。

「名前は佐有里です。36歳です。」

「佐有里さん、本当に素敵ですね。とても36歳に見えないです。」

「いえいえ、そんなことないです。普通のおばさんです。」

と照れ笑いで答えた。

「おばさんなんてとんでもないですよ。スタイルもよくて綺麗なのに。それに…ちょっと上戸彩さんにも似てらっしゃる。」

独身の頃に、たまに会社で似てると言われていた女優の名前が出て心をくすぐられる。

「佐有里さんは指輪がキラキラしてますけど、もしかして結婚されてる?」

「はい。10年目です。」

「お子さんもおられたりします。」

「小学1年の娘が一人です。」

「全然ママに見えないですね。旦那さんが羨ましい。」

少し気恥しいぐらいのべた褒めだが、悪い気はしない。ましてこの声である。

「今日のファッションのポイントは?」

「二重になったシースルーのハイウエストプリーツスカートにブラウスを前だけタックインしてこなれ感を出してみました。」

雑誌に書いてあった言葉がスラスラ出てきた。1週間前ならアイテムの名前すら言えないかっただろう。

「若くて本当にオシャレですね。1か月にどれぐらいファッションにお金かけますか?」

「そんなに多くないですよ…。3万ぐらいですかね。」

今日使った額を言ってみたが先月なら0円である。

「3万もかけれるなんてゆとりがおありなんですね。旦那さんは何されてるんですか?」

「商社勤務の会社員です。」

「それって誰もが知ってる大手商社さんでしょ?」

「ああ、ええ…。」

自然と笑みが出て、笑ってごました。

「旦那さんとはどこで知り合いました?」

「会社のテニスサークルです。」

「じゃあ同じ会社だったんですね。夫婦揃ってのエリートさんですね。旦那さんはおいくつですか?」

「夫は2歳上なので、今年38歳ですね。」

「じゃあ今はセレブな専業主婦生活でショッピングを楽しんでおられたのですね。」

「ええ、まぁ…。」

見栄を張るような性格ではないが、ファッションの質問からかなりずれていたので話を広げられないようにという計算が働いた。

「旦那さんは初めてお付き合いされた男性ですか?」

「えっ?、…そんな事も答えないといけませんか?」

「実はファッションの背景ということで夫婦間の事についてもお聞きしたいんですよ。」

まっすぐ見つめられた視線に押されてわかりましたと答えてしまった。

「夫は3人目の恋人です。大学の時に二人と交際して会社に入って主人と付き合いました。」

「じゃあ旦那さんが初体験ではないんですね?」

浴びせられた質問に体が熱くなる感じがした。

「まあ。そうですね…。」

苦笑いで答えると、矢継ぎ早に

「旦那さんが3人目?」

「4人目かな…」

何故か正直に答えた自分に呆れた瞬間、石井さんと目が合って笑ってしまった。

「奥さん、すごい堅そうなのにそういうのもあるんですね。」

「若気の至りで…。」

笑ってごまかすしかなかったが、体温がかなり熱くなると同時に腰のあたりからじゅわりとくる感覚があった。

「旦那さんとはどれぐらいの頻度でされてるんですか?」

「え、え、え…⁉ それはちょっと…。」

石井さんは白い封筒を差し出し、無理矢理に手に渡してきた。

「夜の生活について聞かせて下さい。謝礼上乗せしますから。」

見てはいないがさっきの生々しい1万円札がよぎった。


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