事前の約束-1
話は少し前に遡る。夜の十時を過ぎ、一階リビングの明かりが消えた頃である。出張に出かけるといって家を出たはずの聡志と甥の武史は夕食を済ませたあと、二人でこの自宅へとやってきていた。そしてしばらく経って二階にある綾子の部屋の明かりを確認したのち、庭へと侵入した。
聡志はこの家の主であり、もし近所の誰かにその様子を見られたとしてもさほど問題はない。庭の奥へと進み、とある部屋のガラス戸を確認する。聡志はそこに手を伸ばすと、なるべく音を立てぬよう静かに戸を開けた。
「よし。大丈夫だ。開いてるぞ」
ガラス戸を開けるとその奥にあった障子戸を続けて開けた。ここは一階の和室であり、この部屋には南向きと西向きの戸があるのだが、障子のある西向きの戸からは出入りせず、鍵を閉めたままにしていた。そのため、綾子も玄関や部屋の鍵は就寝前に確認するのだが、ここだけは鍵が閉まっているものと思い込み、施錠を確認しない。
聡志は今日、自宅を出る前にここの鍵をコッソリと開けておいたのだ。障子があるため、部屋の中からではガラス戸の鍵が開いていることは分からない。
「武史、頼んだぞ。俺は車のなかで見てるからな」
聡志は小声で武史に話しかけた。先ほど、二人で食事をしていた際にも確認したのだが、今回、妻をレイプさせるにあたり守るべき約束を武史に言いつけていた。
・綾子の身体に傷をつけないこと
・寝室以外の場所ではセックスしないこと
それを聞いた武史は最初、「たったそれだけ?」と驚いた様子で聡志に問いかけた。キスもフェラも中出しさえもOKというのを聞いて、武史は信じられない様子だった。
聡志は計画当初、多くの制限を設けるつもりでいた。避妊具はもちろん着用、キスもフェラもNGにするつもりだった。もちろん妻のことを愛しており、大事に思っているからである。
しかしよく考えてみると、それだけ多くの制限を設けたセックスと、武史のような乱暴者に制限なく犯されるセックスと、あとになって映像を見た際にどちらが自分にとって興奮できるかを考えた際に、当然選ぶべきは後者であった。
そのために妻の最近の生理周期を把握し、今週あたりは安全日であることを見越して実行日を今日にしたのである。
武史は一人で和室に侵入すると、カバンから黒いマスクを取り出して頭から被った。一方の聡志は急いで自宅に駐車してある車中へと移動した。これから二階で妻が武史にレイプされる様子を車中で見るのである。そのことは武史にも伝えている。
聡志はなるべく人目につかぬよう後部座席へと乗り込んだ。そして、あらかじめ用意していたノートパソコンを起ち上げると、綾子の寝室から送られてくるライブ映像を確認する。
隠しカメラはベッドの真横からの映像を映し出している。
「いいぞ、バッチリだ・・」
聡志はノートパソコンのモニターに映し出された映像を見て、ニヤニヤと笑みを浮かべた。薄暗い寝室ではあるが、ベッドの小さな明かりがついており、十分に部屋の中の様子を確認できる。そこには自分の妻がベッドの中で自慰行為にふけっている姿が映し出されていた。
(武史、今がチャンスだ・・。早く行け・・)
かつてない興奮を覚えていた聡志は、その部屋にレイプ魔が現れるのを今か今かと待ち構えていた。
一方の武史は二階への階段をゆっくりと登っていた。
(へへ・・。もうすぐだ・・。もうすぐあの女を抱ける・・)
美人で男好きのする顔立ちに、スタイルもいい。武史は射精を覚えた中学生の頃からすでに綾子を自慰の対象にしていた。
高校に入学する際にはすでに童貞を卒業していたが、綾子のことが忘れられず、セックスを教えて欲しいと告白したのである。当然断られたのだが、どうしても諦めのつかない武史は、その後も綾子と顔を合わせるたびに、二人っきりになるのを見計らって、セックスを迫った。また、時には聡志がいない昼間に押しかけたこともあった。
頑なに断られたが、レイプしようとは思わなかった。小さい頃から綾子を意識していたこともあり、強引な手段は選びたくなかったのだ。結局最後まで武史の願いはかなわなかったが、今こうしてその念願が思わぬ形で果たされようとしている。
武史はまだ二十歳だが、すでに十人以上の女を抱いていた。今は近所に住む人妻のセフレと毎日のようにセックスしている。若干、雰囲気が綾子に似ており、綾子の代わりとして抱いているのだ。
週三日でスーパーに勤めているその人妻とは、勤務がない日には旦那が出勤してから夕方まで狂ったようにセックスし、性技を磨いてきた。
武史はこの人妻を抱きながら、この女が綾子であるかのように妄想し、ピルを飲ませて自分の欲望をこの人妻の体内に吐き出し続けていた。現在はこの人妻と近所に住む一人暮らしの女子大生の二人をセフレとしており、ほぼ毎日のようにどちらかとセックスをしている。
(綾子を絶対に俺のものにしてやる・・)
武史は今回任された理由を聡志から聞いていた。ずっと憧れていたあの綾子が欲求不満であることを知ったときから、武史は綾子を自分のセフレにすると決めた。
二階に上がり、綾子の寝室の前についた武史は中の様子を伺い、身につけていた衣服を脱ぎ捨てると、頃合いを見て扉を開けたのだった。