第18話『寮監の誕生日』-1
第18話『寮監の誕生日』
「どうせアシナガバチか何かでしょう。 なら、わざわざ校務員さんを呼ぶ間でもありません。 私がパパッと落してあげるから、案内なさい」
「ありがとうございます。 寮監様のお手を煩わせて申し訳ありません」
「構わないわ。 ちょうど時間があったし、あんまり高いところを叩くことってないから、試してみるのも面白そう」
史性寮裏庭を【A2番】と寮監の9号教官が歩いている。
「あれです」
「ああ……なるほど……よくあんなところに見つけたわねぇ」
【A2番】が指差した先には、確かに何やら茶色い塊が枝先にぶら下がっている。 高さにして凡そ地上10メートル、専門の道具なくしては届かない位置だ。 さいわい木々の外側にあるため、思いきり撓らせれば鞭でどうにかなるだろう。
「あんまり大したことは無さ気だけれど……念のため落としちゃいましょう。 少し離れて」
「はい。 よろしくお願いします」
「……それっ」
ビュッ! 地面に伸びた鞭を大振りに振り上げ、先端が弧を描いて枝を叩く。 見事一振りで茶色い塊は粉々になった。
「あら、あっけない。 せっかくウィップで遊ぶつもりだったのに……手応えも全然ないし、トックリバチの巣だったかしら」
「す、すごいです。 たった1発なんて……」
「ち……壊れちゃえば続けられないわねぇ。 巣が落ちようが壊れようが、これで問題ないでしょう。 破片は拾って林に戻しておきなさい」
「はい。 ありがとうございました」
「少し物足らないけど……しょうがないわね」
散らばった木片を集める【A2番】を尻眼に、クルリ、9号教官は踵を返した。 新調した革製の長鞭を弄びつつ、寮の入口へと向かう。 角を曲がったところで、正面から【A4番】が駆け寄ってきた。
「寮監様、申し訳ありません!」
開口一番大きな声で謝罪の言葉だ。 普段落ち着き払った【A4番】だけに、駆け寄ってくること自体珍しいのに、どうも様子が尋常でない。
「ど、どうしたのかしら?」
思わず身構える9号教官。 【A4番】が動揺しているくらいだから相応の事態に違いない――という予想は、ごくあっさりと裏切られた。
「日課のマスターベーションでは、1回につき30秒で達しなければなりませんのに、恥を掻くために絶頂するという前提を忘れ、つい淫欲に耽ってしまい……気づけば5分以上経っておりましたの」
「は、はぁ……それで?」
何ということはない、オナニーに時間をかけ過ぎただけ。 教官の目の前で披露する機会ならまだしも、誰も見ていない自室で夏季休暇中に励む自慰まで、一々監督はしていない。 自分から言いにこなければ完全にスルーするレベルの、だからどうしたとツッコみたくなるような報告に、思わず間の抜けた相槌になってしまった。
「学園生徒としてあるまじき、ゆゆしき事態……心得違いも甚だしい振舞いに興じてしまいましたわ。 どうかわたくしの弛んだオマンコを、今一度躾けていただけませんでしょうか」
【A4番】は既に下着を脱いでいた。 こちらが指示を出す前に、壁に両手をつき、スカートをたくしあげてお尻をからげる。 いわゆる『尻叩き』に備えた格好だ。 腰のくびれを含め、品よく締まった桃尻がこぼれる。 そうしておいて両手を後ろに回し、尻たぶを左右に押し広げた。 めいっぱい爪先立ちしているためお尻が拡がり、淡くくすんだ肛門はもちろん、慎ましやかに閉じた持ち物も露わだ。
「……まあ、そこまでいうのなら……ふう」
脱力しつつ、9号教官は鞭を構えた。 どことなく【A4番】に主導権を握られているような違和感があるが、生来鞭打ちは嫌いじゃない。 というか、大好きだ。 鞭が肌に弾ける音色も、肌に刻まれる線条痕も、ジワリと広がる皮下の朱色も、全部含めて心地いい。 見栄えする尻を備えた【A4番】が、自分から鞭で打たれたいというのなら、自制する理由は見つからない。
ヒュッ――……。
何しろハチの巣に届くくらいに長い鞭なので、振りかぶってから先端が尻肉に弾けるまで間隔がある。
パシィッ!
「ひとつ。 ありがとうございます」
鞭慣れしているからだろう、【A4番】が静かに回数と感謝を述べる。 駆け寄ってきた時は上擦っていた声も、ぶたれた反応は落ち着いたものだ。
ヒュッ――……パシィッ。
「ふたつ。 ありがとうございます」
ヒュッ――……パシィッ。
「みっつ。 ありがとうございます」
罪状が詰まらなすぎて、手加減がてらお尻のてっぺんばかりぶってみたが、どうも反応が薄くてつまらない。 狙いを僅かに下げ、両手で拡げた尻たぶに変える。