第17話『敗者のケジメ』-2
「「……」」
黙って顔を見合わせる4人。 どれも過酷そうではあるが、1つだけ群を抜いている。 しばらくメモに目を通してから【A3番】が顔をあげた。
「あのさー、今更なんだけどさ。 ホントにこれ全部アコもやらされたの?」
「まぁね。 何事も案ずるより産むがやすしっていうけど、案ずるより痛いのもあるから、真面目に選んでよ。 全く新しいのでも構わないけど、あんまり温いヤツだと寮監キレちゃうから、ある程度は厳しくしてよね」
床に寝そべった【A5番】が答えた。
「A番の『血のマニキュア』って……マジですか」
今度は【A1番】が質問する。
「一々念押ししなくてもいいって。 マジもマジ、大マジです」
「ぜ、全部の指の爪にさしたんですか……?」
「さすがにそれはなかったな。 っていうか、1本でもヤバイから。 当時の寮長が全員の親指に挿した後、自分で自分に挿したんだけど、きっちり全員気絶したからね。 まあ、ケジメってのはそれくらい全力でつけるものだったんだ。 寮監も、今より大分イケイケで、私たちのことなんて『いくらでも代わりがいる』みたいにザツな扱いだったから、私たちも感覚麻痺しちゃってたなぁ……。 正直おススメしないけど、やってみたいってんなら構わないよ」
「じ、冗談キツイです、あはは……」
【A1番】は笑いで誤魔化し、
「こ、この中だったら、あたしはBがいいと思います。 長時間耐えるのは得意ですし、みなさんさえ良ければ、あたし1人でいかせてください。 寮監に『必ず勝ちます』っていっちゃった手前もありますし、お願いします」
全員にペコリ、頭を下げた。 けれど首を縦にふる者は、ただの1人もいなかった。
「いやいや、そういうスタンドプレーは無し。 全員揃ってナンボだって。 とまれ、去年と同じケジメっていうのも芸がないし、ウチもアイに賛成する。 でさ、2つ考えたんだけど、アヌスじゃなくてオシッコ穴に薔薇水詰めるってどうよ。 そしたら2日も3日もマングリしなくて済むんじゃん」
と、【A3番】。
「もう1つは、ただアヌスで香水蒔くだけだと寮監好みになってないと思うんだ。 だから、自分らでマングリしたままお尻を叩いて、香水瓶になってる間中お尻を赤くしとくの。 これってポイント高くない? 薄っすら染めるくらいなら、お尻ペンペンにしたって大して痛くないし、ウチらなら楽勝で我慢できるでしょ」
「いいんじゃない? 尿道の方が微調整が効くし、小細工だとしても、いままでよりちょっぴりでも変えた方が、一生懸命考えてる感じがでると思う。 あと、アイだけで行くっていう気持ちは分かったけど、そこは反対だな。 BやCを巻き込むのも面白いそうだけど、あくまでケジメは最上級生が取るべきだと私は思うからね……やっぱり5人全員でいった方が筋が通ってるよ、うん」
肩を竦めて【A2番】が頷いた。
「……そういうことでしたら、Bの『薔薇水』をベースに考えましょうか。 容器は尿道に決まりとして、分量、出し方その他案があればおっしゃってくださいね。 それと、せっかくなので報告の文言はアイさんにお願いしてよろしいかしら? いつもわたくしだとマンネリになってしまって、聞く方も飽きてくると思いますの」
下がった眉尻で様子を伺う【A4番】。 机の向こうから、
「私も『薔薇水』に一票〜」
間延びした【A5番】の声がして、これで満場一致になった。
わいわい、がやがや。
自分たちの調教プログラムを真剣に検討する5人。 少女たちが寮長室を出たのは、Cグループ生が入浴を終えた頃合いだ。 最上級生の長い一日はそう簡単には終わらない。 そして、こうした話し合いを経る中で寮の色が醸される。 例え胎内にポッカリ広がる穴だらけの毎日だとしても、前向きになる余地は決してゼロではない。