♥重い男♥-7
「ええっ、も、もったいない!! 天野くんの何が気に入らなかったの? 彼、見た目ちょっと怖そうだけど結構かっこいいじゃない。……それに」
小野寺くんの言葉は、きっと一般的な意見そのものだと思う。
見た目はちょっと怖そうだけど、結構かっこいい。
うん、あたしもそう思うよ。
だけどね。
「何より里穂ちゃんのことがすっごい好きなんだと思うよ、彼!」
そう、あたしはそれが重くてイヤだったんだ。
天野くんの告白は、真っ赤な顔してどもってばかりのすごくぎこちないものだった。
だけど、気持ちはすごく伝わってくる、一生懸命な告白。
きっと付き合ったら、めいっぱい大切にしてくれる、そんな気がした。
今日の帰りの電車で、天野くん本人から、一目惚れしてその勢いでスウィングにバイトに入ったことを知り、今、小野寺くんの話で彼があたしにいかに気があるかを知り、告白してくれた気持ちはより真剣なものであるかを知った。
でも……。
さっきまでの楽しい空気が一転、すっかり黙り込んでしまったあたしに、小野寺くんが大げさにため息を吐いた。
「里穂ちゃんって、人を本気で好きになったことないでしょ」
「……え」
「今までの恋愛バナシ色々してくれたけどさ、里穂ちゃんが感情的になったって印象を受けないんだよね」
「感情的……」
「そ、人並みに喜怒哀楽はあるんだけど、なんていうのかなあ、恋愛に対してどこか一歩引いたように見えるっていうか……僕もうまく説明できないんだけど」
小野寺くんはもどかしそうに首をプルプル横に振ってから、一つ大きくうなづいた。
「うん、例えるなら恋してる女の子を『演じてる』ように見えるんだ!」
小野寺くんは自分の言葉がうまく言い表せたようで、ポンと手を叩いてすごく嬉しそうに笑った。