♥重い男♥-5
「里穂ちゃんが僕みたいな人種にも理解をしてくれる女の子だと思わなかったよ、正直」
小野寺くんがゆっくり紅茶を飲んではふう、と一息ついてこちらに笑いかける。
そう、小野寺くんがオネエだと知ったあの日、怯える彼をよそにあたしは衝撃を受けつつ、大口を開けて笑い出したのだ。
「だってー、あたしの好意を総スルーされて、自信を失いかけていた矢先のオネエ発覚でしょ、なんか一気に拍子抜けしちゃってぇ。逆に小野寺くんがオネエで安心しちゃったのよね」
先述の以前在籍してたイケメンを巡って、小夜さんとちょっと揉めたことがあったあたし。
もともとあたしが二人の間に入り込む余地がなかったのに、あたしが勝手に一人で盛り上がって、うまくいかなくなって、小夜さんに八つ当たりしてただけなんだけど、それでも小夜さんはそんなあたしに優しくしてくれて。
そんな小夜さんが大好きになったあたしは、同性を好きって言う小野寺くんの気持ちにちょっぴり寄り添えているのかもしれない。
ともかく、その一件があって以来、あたしと小野寺くんは性別を超えた友情が芽生えたのである。
「……でも、天野くんは誤解しちゃったのかもね」
小野寺くんはカップをソーサーの上にカチャリと置くと、申し訳無さそうに目を伏せた。
そう言えば、さっきそんなことがあったなあ。
閉まりかけのドア。アングリと口を開けた天野くん。
滑稽な彼の顔を思い出すと笑いが込み上げてくる。
「うーん、別に小野寺くんが気にする必要なんてないんじゃない? それに小野寺くんだってニコニコ挨拶してたし」
「だって、それはそうするしかなかったでしょう? 変に言い訳する方が怪しいと思ったし。……でも、今思うと、駅に迎えに行かない方がよかったんだよね。ってか、そもそも電話もしなきゃよかったかも。天野くん、里穂ちゃんのこと好きっぽかったし、絶対傷ついてるよぉ」
「えぇ!?」
思わず素っ頓狂な高い声が出る。
今日、天野くんに告られたことは小夜さんにしか話してないのに。
……この人、どんだけ鋭いの!?