♠性悪女♠-6
多分電話の相手は女友達だろう。
俺にはわからない化粧品の話やファッションの話で盛り上がっているから。
何が楽しいんだか、キャッキャッと声を上げて笑う松本を横目でチラリ。
ーーホント、外見だけは天使そのものなんだけどなあ。
何気なく入ったカフェで、レジ打ちをしていた松本に一目惚れをしたのは半年前のこと。
勢いで行動してばかりの俺は、何とか仲良くなりたい一心で、たまたま店の入り口の『アルバイト募集』の貼り紙を見て、速攻履歴書を買いに行ったっけ。
あの時の自分に言ってやりてぇ。
お前が惚れた女は、とんでもない性悪女だから、絶対やめとけって。
今更どうあがいても無駄なことをボンヤリ考えていると、フワリと風が舞い上がって、電車のライトが近づいてくるのが見えた。
◇
俺が騙されただけあって、松本は「表面的には」常識人。
電車に乗る前に、盛り上がっていた電話もちゃんと切り上げてバッグにしまった。
電車に乗り込んだ俺達。松本は扉のすぐ脇に立って手すりに掴まっていた。
その手すりを掴む彼女の指は、細くて白くて美しくて。
さらにそこから伸びる手首も腕もほっそりとして、もう、本当にちょっとキツく抱き締めたら折れてしまうんではないかってほど、華奢な身体つきだった。
今まで出会った女の子にも可愛い娘はたくさんいたけど、こうして見れば松本は、それを遥かに凌駕するような別次元の外見だ。
その華奢な肩も、色っぽい首筋も、そして小さくて整った顔も。
これだけ目を惹く美しさだから、悔しいながらも見惚れてしまうんだよなぁ。
そんなことをボンヤリ考えていたら、突然松本がこちらを見た。
いきなり合ってしまった視線に、慌てて目を逸らす。
ヤベッ、見てたのバレたか……?
キュッと下唇を噛んでいると、隣からクスクスと小声で笑う声が聞こえて来た。