〈微笑みの裏側〉-18
『中身を確認しないのか?……フン!まあいい。もう今日は帰っていいぞ?シャワー浴びたら勝手に帰れ。タクシー代なら“有る”だろ?』
男は立ち上がり、花恋だけを残して部屋から出ていこうとする。
用は済んだのだから『もう要らない』とでも言いたげに。
「……お金返します…だ、だから…もう私に構わないで……」
欲しいのはお金じゃない。友人達と同じ、平々凡々な暮らしを送りたいだけだ。花恋は駄々っ子が拗ねたように茶封筒を手で払った。
『オマエがギャラを受け取らなくてもな、契約は消えねえんだよ。どうしても嫌ってんなら違約金の2000万円払え。オマエが払えねえならオマエの親から貰ってやるよ』
「ッ…………」
男はギロリと一睨みして、ドアを閉めて出ていった……何も言い返せなかった花恋は悔しくて鼻水を啜り、そして茶封筒を握りしめると事務室を出た……。