確信-1
佳奈に彼氏ができたことは薄々勘付いていた。メールを入れても返信は滞り、電話をしても出ない時が多くなっていた。忙しいときもあるかと思って誤魔化していた。それでも確かめようと突然佳奈の家を訪れた僕は、彼氏の存在を確信していた。
玄関を開けると佳奈は気怠そうな作り笑顔で僕を迎えていた。
「珍しいわね。会社帰りに寄るなんて」
「たまにはいいでしよ。はいお土産」
佳奈は乾かしきれていない髪を束ねて、珈琲を沸かそうとしていた。後ろ姿は気怠そうに肩をすぼめリビングは不自然に綺麗に掃除されていた。トイレ借りるよ。佳奈に伝えてトイレの便器をあげて僕は完全に確信していた。女性には汚せない場所に男が残すトイレの跡がはっきりと残っていた。佳奈の性格を知っている僕はトイレで彼氏の事実を素直に認めることしかできなかった。家族が来ていたら来る前に伝えるのが佳奈だったし、トイレはいつも僕が汚す跡だけがいつも僕を迎え入れてくれていた、その汚れを落としていたのはいつも僕自身だったからだ。
悔しかった。
洗面台で手を洗っていると僕の歯ブラシが無くなっていた。悔しくて泣きそうになってしまっていた。佳奈はまだ若い。仕方がないのかもしれない。それでも、悔しさが優ってしまっていた。
リビングに戻り珈琲を前に置いた佳奈に向かって、なぁ、SEXしようよ。と最後になるかもしれない佳奈との行為で気持ちを紛らわせることしかできなかった。
佳奈の家を後にした僕は、友達に連絡して海に行こうと誘って新しい彼女を探す週末を過ごしていた。そんな中でようやく出会えたのが美奈子だった。
美奈子は僕の予想を超える完成された女性だった。美奈子と付き合い、初めての夜を終えた僕だったが、それでも心は佳奈を忘れることができていなかった。