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快楽堂治療院
【SM 官能小説】

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快楽堂治療院3-3

“チリンチリン”
玄関から呼び鈴の音が聞こえた。
「ん?誰か来たんじゃねぇか?」
徳太郎が言った。
「おかしいな、休院案内出てるし…今日は予約も入って無いのに…」
神崎は頭を傾げながら玄関に出てゆく。
「ごめんください」
玄関には、一人の女性が立っていた。
「はい」
神崎は返事をしながら女性を見る。
どこか見覚えのあるような気がした。
「こんにちは」
ニッコリと微笑み神崎に挨拶する女性。
年の頃は27、8。神崎と同年代のようだ。
長い髪に色白な小顔。
目鼻立ちはスッキリと通ったなかなかの美人だった。
あまり背は高くないが、スラリとスレンダーな体つきが、彼女の可愛らしさを引き立てているように感じる。
「あの…どちら様でしょうか?今日はお休みさせて頂いてるんですが…」
戸惑う神崎をよそに、女性は院内を懐かしそうに見回している。
「わぁ〜、ちっとも変わってないわ。あっ!あのソファまだあるんだ!」
そう言うと、勝手に玄関を入り、待合室に置かれた年代物の大きなソファにピョコンと座り、ギシギシと音を立てながら体を上下させた。
「あの…すみませんが…」
恐る恐る訊ねる神崎。
「ちょっと音がうるさくなったわね、このソファ。」
「もう20年ぶり位になるんだもの…仕方ないか…」
ブツブツ独り言を言いながら院内を見回している。
「あ…ごめんなさい。懐かしくなっちゃって」
自分の隣で困惑気味に佇む神崎にやっと気づいたように、女性は神崎の方を向くと、ペコリと頭を下げた。
「こんにちは。曽我奈穂子です」
「あ、どうも…神崎…」
「京之介君でしょ?」
「えっ?!」
クスクスといたずらっぽく笑みをこぼし、女性がそう言った。
「な、なんで??」
初めて会ったはずの女性に名を呼ばれ、すっかり困惑する神崎。
と、後ろで
「おーっ?!曽我の婆さんとこの孫かぁ?!」
徳太郎の大声が響いた。
「わぁ!おじさま、覚えててくださったのね!」
満面の笑みで答える奈穂子。
「おおよ!お前がこぉーんな小せぇ頃から知ってんだぜ!」
徳太郎は手のひらを下に向け、ぐぅっと下の方を撫でるようにヒラヒラと動かした。
「曽我?…曽我…?」
「あっ!爺さんのっ!」
「やっと気づいたか!馬鹿息子!」
奈穂子の祖母、曽我つやは、神崎の祖父がこの治療院をやっていた頃の馴染みの患者だった。
そう言えば、神崎がまだ子供だった頃、いつもつやにくっついて離れずにいた少女が居た。
つやの施術中、待合室で一人で座っていた少女と何度か遊んだ記憶が甦ってきた。
「あ…つやさんの…」
「嬉しい!思い出してくれた?」
奈穂子が言った。
「曽我の婆さんは元気にしてるのか?」
徳太郎が訊ねる。
「お婆ちゃん…去年亡くなったの…」
少し目を伏せ、奈穂子は答えた。
「そっか…結構な年になるからな…うちの爺さんもおっちんじまったよ」
「えぇ?そうなの?」
奈穂子は少し驚き、そして続ける。
「久しぶりにこの町に来たから、懐かしくて治療院の場所に来てみたの」
「そしたら、まだ治療院はあるし、開業してるみたいだったから、嬉しくなっちゃって…」
遠いところを見るような眼差しで、奈穂子は言った。
「今は、こいつが爺さんの後を継いでるよ」
徳太郎が、神崎の肩をポンと叩きながらそう言った。
「そうなんだ、京ちゃんが」
“京ちゃん”などと呼ばれ、神崎は照れくさい。
“京ちゃん”などと呼ぶのは、亡くなった母だけだった。
「ところで…看護婦さん募集してるのね?」
突然奈穂子が言う。
「張り紙見たの」
フフと笑いながら神崎の顔を覗き込んだ。
「あ、うん。そうなんだ、人手が足りなくなって…」
「私が務めようか?」
「えっ?!」
「こう見えても、看護婦の資格…持ってるんだ」
エヘンと胸を張り、奈穂子が笑った。
「本当?!」
降ってわいたような話に、神崎が目を見張る。
「本当よ。この町に引っ越す予定でいたから、職場探ししなきゃいけなかったんだ、どっちにしても」
ペロッと舌を出して奈穂子が続ける。
「張り紙見た時、“ここだっ!”って思ったの…勝手に」
照れくさそうに言った。
「そりゃ…こっちにしたら願ったり叶ったりな話だけど、看護婦って言ってもほとんど雑用だし…給料もそんなに出せないよ…」
俯きながら呟くように言う神崎に
「いいのよ、それに…ここで働けるなら、お婆ちゃんも喜ぶでしょ?」
奈穂子は笑顔でそう答えた。
「ワゥーン」
いつのまに来たのか、マックが奈穂子の足下に擦り寄った。


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