帰宅-2
百貨店をでる頃には気分が優れはじめていた。あれだけ気を病んでいたことが不思議なほど軽く考えれるまでに回復していた。
「とても、お似合いですよ」
「そうかしら。少しきついわ」
「身長より少し足が長いのよ。23.5をお出ししますね」
満足していた。新品のヒールはわたしを少し落ち着かせてくれていた。突然の出費だったけど明日からを考えると安い買い物だと思いカードを切っていた。気持ちが弾んできたわたしは、有楽町のホテルビュッフェに向かって昨日から何も食べてないお腹に沢山の果物を食べようと急ぐ様に歩きだしていた。
気分が高った私は、ホテルに着く頃には完全に普段の自分を取り戻していた。ビュッフェなんて雑多な所ではなく高級料理こそわたしに相応しいと思い直していた。
「ワインをグラスでれるかしら?」
「かしこまりました。前菜は如何なさいますか?」
「そうね。イベリコハムとチーズをくれるかしら」
「かしこまりました」
店内は圧倒的に女性が多かった。平日の午後は殆ど女性しかいないことは知っていた。客層は高級な洋服を着飾った大人の女性の活気に溢れていた。そうよ、ここがわたしの居場所なのよ。普段の元気を取り戻し、今度は赤を頂けるかしら?そう言えるまで回復していた。
メインディッシュに三重県のフィレステーキを食べてデザートにマンゴープリンを食べてわたしの心は完全に満たされていた。気分が乗ったわたしはホテルのロビーでタクシーを拾い銀座から1500円の距離に買った自分のマンションを見上げ十分な幸せを実感していた。
郵便ポストを躊躇うことなく開け、あの人の手紙がないことにホッとしてベッドに倒れるように深い眠りについてしまっていた。