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元人妻との恋
【フェチ/マニア 官能小説】

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帰宅-1

「杉本佳奈さーん。診察室にお入り下さい」

鬱陶しい待合室から逃げるように地面を見ながら診察室に座ってマスクを外した時だった。

「久しぶりですね。どうかなさいましたか?」
「ちょっと寝つきが悪くて」
「食事は取れてますか?」
「大丈夫です。忙しくて寝付けにくいだけです」
「どれくらい忙しいのですか」
「たまにタクシーで帰る位です」
「新聞とか本は読んでますか」
「朝刊は帰ってからですが目を通すようにしてます。でも忙しいときはたまにサボります」
「わかりました。えーと。前回は3年前ですけど同じような処方箋で様子を見ましょうか?」
「よろしくお願いします」
「はい!あとは血圧測ったらおしまいです。また良くないようなら来て下さいね」

処方箋を貰うために、どうしようもない診察ごっこを終えてさっさと家に帰りたかった。転職してから残業の多い日常を暮らすわたしにとって毎月ある産業医との大丈夫ごっこを繰り返してる私には何てことない診察だった。どうすれば処方箋を貰えるのかは知っていて当たり前だった。

待合室で処方箋を貰ったわたしは、急ぐように駅のトイレに駆け込んで精神安定剤をミネラルウォーターで飲み干して、処方箋の袋と領収書と跡形もなく千切って便器に流して早く効くときを待ちわびるように地下鉄に乗り込んで目を閉じていた。

あの人は何故か夏になるとわたしを誘ってくる人だった。数年に渡り毎年海の日はあの人といる恒例行事になっていた。

「佳奈ちゃん。今年の海の日、外房に行ってみない?」
「いいけど、何で外房なの」
「行ったこと無いから。それだけさ」
「なにそれ。いいわ。考えておくわ」
「そうだ!今年はね黒いビキニがいいな。佳奈ちゃん似合うと思うよ。だから楽しみにしてるね」

突然連絡を寄越して突然要望を伝えるのもあの人の特徴だった。それでも、わたしは要望通り黒いビキニに収まらない胸を包み込んで、ちょっと大きいお尻が恥ずかしかったけれどあの人が喜ぶことは知っていたから、要望通りに海に行ってあげていた。

電車の中で溜息が溢れてしまっていた。あの人を忘れようとしても溢れるようにわたしの頭はあの人ばかりが出てきてしまう状態だった。

「何か作るけど、何か食べたいものある?」
「うーん。そーだなぁ。ホタルイカの煮付けと千切りの山芋が食べたい」
「えぇ、何それ。わたし居酒屋じゃないんだけど」
「違うよ佳奈ちゃん。この間、テレビみてたら美味しそうだったんだよ。食べたことないし。だから言ってみただけ」
「ホタルイカねぇ。分かった。作ってみる。美味しく作れるかわかんないけどねー」

そんな日もあったような記憶を思い出していた。何でまたホタルイカなんてでてきたんだろう。意味が分からないのもあの人らしさだった。

「ホタルイカ、思ったより普通だね。刺身のほうが良かったかも」
「ちょっと、作ってって言っといて何それー」
「違うよ。どんな食べ物か知りたかっただけだよ。佳奈ちゃんが作ってくれて本当に嬉しいんだよ!だから今日も沢山遊ぼうね」

そんなに美味しくない手料理をテーブルに置いたまま、どちらからともなく自然に深いキスを絡め、勃起したあの人を咥えテーブルに腰をかけて股を開いて、どうしたいの?と誘い、恥ずかしい大きなクリを舐められ、気持ちよすぎる体感に溺れ、犯されるようにテーブルに身体を押し付けられてお尻を乱暴に掴まれるバックだけのSEXを誘ったあの日のことも思い出してしまっていた。わたしは確かに凄く興奮していた。ねぇ、イイわ。イイ。凄い気持ちいい。まだ23歳程度のわたしは、あの人に向かってどうしようもない女で誘っていたことを思い出していた。当時のわたしは若かったのだ。

憂鬱が限界に近づいていた。そのために処方して貰った安定剤をもう一つ口に含んで気持ちを切り替えようと銀座駅で降りて、百貨店を見てから帰ろうと意味もなく高級洋服を眺めて心を落ち着かせるようにあたりを彷徨ってしまっていた。


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