第7話『牝豚調教』-3
パァン、パァン、パァン、パァンッ。
「……っ……くっ……うっ……ん……ブヒッ……」
どうしても声が洩れてしまう時は豚声を被せて誤魔化すうちに、【A4番】のお尻は朱に染まっていった。 腰から足の付け根まで全部だ。 横に鞭打つだけでなく、尻の割れ目をヒールで拡げながら縦に肛門打ちも混ぜたため、尻たぶのてっぺんから尻の谷間まで隙が無い。
「ふぅ……この辺でよしとしましょうか」
ピンク色というよりは真っ赤になったお尻を前に寮監が呟く。
「ぶ、ブヒぃ……」
鞭打ちで熱が籠ったお尻を震わせながら、ホッとする【A4番】……けれど少女が安心するには早過ぎた。
「お尻はこれっくらいでOKとして、次は背中にいきますよぉ。 その次にお腹とおっぱい、それから手足とオマンコで……最後に顔を豚さんにしてあげましょうね」
「フゴッ!?」
「早くしないとお尻が元に戻っちゃうから、もし全身豚さんになれなかったら、またお尻から染め直さなきゃね。 そんな面倒はしてらんないし、ビシバシ、まきでいきましょう。 さ、背中をこっちに向けて」
「フゴッ……フグッ」
【A4番】は慌てて尻をさげ、気持ち背中を反らせた。 少しでも鞭打ち易いよう、上半身を傾ける。 寮監が冗談をいうタイプでない以上、身体全体を真っ赤に染めないうちは納得してもらえない。 ならば少しでも多くの鞭を、勢いよく振るってもらうしかどうしようもない。 当然勢いを増した分だけ苦痛は何倍にもなるわけだが……泣き言はいっていられない。
「フグゥ……ぶ、ブヒィ……」
鞭打たれる場所も、尻、背中はいいとして、膨らんだお腹をぶたれるのは耐えられるだろうか? お腹には『空気浣腸』と『液体浣腸』をブレンドしてある。 アナルプラグで栓をしているものの、既に便意は限界に近い。 さらに鞭打たれて、暴発させずに耐えられるだろうか? 乳房や太ももを打たれるのは、お尻より痛くて辛いけれど、過去の経験から我慢できると思う。 けれど、顔はどうだろう? バラ鞭で顔を叩かれたことはない。 しかも豚顔を作るためにフックで目と鼻がひん曲がった状態だ。 鞭が逸れてフックにあたりでもしたら……考えただけで絶句する。
「ブッ、ブヒッ、フゴッ!」
ダメだダメだ、これからどうされるかなんて考えてはダメだ。 【A4番】は一際大きく鼻を鳴らした。 寮監に躾けてもらうスタイルに『豚』を即興の勘で選んだのはほかならぬ自分。 となれば最後まで自分の勘に心中するより他はない。
ビシィッ。
的が広くなって勢いを増したバラ鞭が背中を襲う。 中途半端に考え事をしていた最中、肩甲骨の真下に熱が炸裂し、
「ぶっ、ぶひッ」
冷静に痛みを受けとめるつもりが、つい豚声で啼いてしまった。 悲鳴に苛立ったせいか、
ビシィッ、ビシィッ、ビシィッ。
心なし寮監の鞭が勢いを増す。
「……ッ……ンッ……ンン……ッ!」
【A4番】は歯を喰いしばり、降り注ぐ鞭に身を委ねた。 お腹は便意でゴロゴロうねり、鞭打たれたところはジンジン疼き、現在進行形で背中の痛みに息が止まりそうになる。 それでも、どんなことがあっても自分より御主人様を優先させるのが『M奴隷』の嗜みだ。 他人を甚振るのが趣味である寮監が今の御主人様である以上、このくらいは想定内――というか、想定外というわけにはいかない。
バシッ、ビシッ、ビシィッ。
「んっ……んんッ……ぶ、ブヒッ……!」
華麗な鞭捌きの下では、鞭跡が重複することなく、見事に肌を朱に染める。 皮膚を破くことなく、また痣として不必要に傷跡が隆起することもなく、まるでペンキを塗るかのよう。 そんな手練のバラ鞭が均等に降り注ぐ中にあって、豚を演じる少女が抑える懸命な嗚咽が、寮監室に木霊した。