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調教学園寮夜話
【学園物 官能小説】

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第6話『寮監指導』-1

『寮監指導』



 寮監室。 空調、湿度、気温その他一切がコントロールされ、不快指数を一定に抑えてある。 インテリア代わりに『三角木馬』や『鋼鉄の処女』、『銅の牡牛』に『絞首台』といった旧世紀拷問具のイミテーション並んでいる。 どれも寮監たる9号教官の趣味で、実際に使用されることは滅多にないオブジェではあるが、一応正規の用途には耐えるらしい。 部屋の真ん中には大きなモニターがあって、寮各所に設置されたCCTV映像を順に映している。 今はCグループ生が『海の研修』に出向いており、Bグループ生は明日からの厳しい研修に備えて早めに就寝しているため、映像はどれも動きがない。

 【A4番】が寮監室をノックして入室を許可されたとき、9号教官は静かな寮に退屈していたのだろうか、眠たそうにソファで寛いでいた。 ソファの隣に直立不動で背筋を伸ばしたところで、寮監に用件を促される。 【A4番】は手にした『日用品による特訓週間』のマニュアルを渡し、チェックして欲しい旨を伝えると、しばらくマニュアルを黙読してから、寮監はつまらなそうに首の関節をポキリと鳴らした。

「……正直、好みじゃありませんねぇ。 もうちょっと私も愉しませてくれる内容を期待してましたけど、まぁ、貴女方の代は格別甘いようですし……こんな感じに落ち着くのが自然な気もしてましたけど。 安直に先輩をコピーせず、自分たちで考えた内容というのはよく分かりますから、その点、工夫しようとした意図は評価してあげましょう」

「ありがとうございます」

「ただし、このままでいいとはいいませんよ〜。 まず『指導』の項目ですねぇ、素案だと『指導を課すことができる』になってるのを変更しましょうか。 このままだと指導を全くいれない上級生も可になってしまうので、『期間中、A生は必ず毎日1人以上に指導を課す』に変えましょうか〜……宜しいかしら?」

 ソファからぼんやりした視線をおくる寮監に、即座に頷く【A4番】。

「了解いたしました。 期間中の緊張感を維持する意味でも、積極的に指導を追加することは有効ですわ。 見せしめの意味も込めてなるべく多く、最低でも1人は指導しろというご指摘……と承りました」

「頭の回転が速い人って、みなまで言わずに済むので助かりますねぇ。 本当なら『毎日10人以上』にしたいところだけど、そんなに時間もない気がするし、1日1人見せしめにできれば十分でしょう」

「はい。 『0』と『1』の違いは大きいです」

「その代わり、生温い指導は禁物ですよ? 貴女たちがどんな指導をするか、愉しみにしてるんですもの。 生半可な指導で納得するつもりはありませんからね。 やるからには血祭りに上げるつもりで、徹底的に酷な目に遭わせること。 それが貴女たち自身のためにもなるんですから」

 寮監の頬には、意味がありげな薄笑い。 無言でうなずく【A4番】は、寮監の意図など重々承知だ。 寮監が言い出しそうな事、という認識がある。 Cグループ生の不手際はBグループ生が、Bグループ生の不手際はAグループ生が肩代わりするのが寮の鉄則だが、ではAグループ生の不手際はというと、Aグループ生の上には寮監しかいない。 最上級生たる【A4番】たちが温い指導をした場合、不適切な指導をした過度で、寮監直々に【A4番】へのペナルティを執行するという宣言だ。

 ついでに補足すると、【A4番】たちがどんなに厳しく後輩を指導したところで、ほぼ確実に寮監から何らかの言いがかりをつけられることになるだろう。 訓練週間を終えて後輩への指導が一段落したところで、Aグループ生全員が寮監室に集められ、寮監から激しい指導を受ける――ここまでが定番の流れといえる。

「もう1つ。 最後の追加指導ですねぇ、これ、せっかくだから全員を対象にしたらどう? 35人全員で追加指導っていうのも面白いじゃない」

「……了解しました。 違和感なくそのような結果に落とし込むよう、気をつけますわ」

「打ち合わせは綿密にね。 上級生の誰か1人だけ『誰にも合格を出さないキャラ』を作っちゃうとか、上級生の5人それぞれが事前に不合格を出す後輩を決めておくとか……それだとヤラセになっちゃうかな〜。 あからさまだとやる気がなくなるし、適度にチャレンジさせすぎるとクオリティが凄いことになるコもいるし、貴女たちに出来るかしら? せいぜい気張りなさいな」

 注文をつける側は気楽なものだ。 【A4番】の表情は若干曇り気味である。 というのも、全員を不合格にするという設定は彼女の本意ではない。 しっかり創意工夫した醜態を晒せた後輩に対しては、努力を正しく評価してあげたいと思っている。

 けれど、寮監から提案された以上、それは提案ではなく命令だ。 



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