翌日-1
結局会社は休むことにした。
「体調不良なので休ませて下さい。」
「佳奈ちゃんが体調不良って珍しいねぇ」
「ええ、すいません。ちょっと調子悪くて」
「おーけー、ゆっくりお大事にね」
体調は本当に最悪だ。昨夜は殆ど寝ていなかった。あの人の事を思い出し憂鬱に苛まれて今朝を向かえていた。
「シャワーはいろうよ」
「そうだね、今日も暑かったな」
「やだーすごき大きい!硬くなってるんですけど。舐めてもいい?」
「ちょっとでちゃうよ、シャワー行こうよ」
「うん。いーっぱいキスしよ!」
そう言ってシャワー室の前であの人の勃起を悪戯に咥えてからかっていた日を思い出していた。シャワー室では当たり前のように狭い湯船で片脚を洗面台に乗せてSEXして射精はまだ張りのあったGカップで受け止めてあげていた。
「佳奈ちゃん、デカイなぁ。何カップ?」
「Gだよ。でもそんなに胸に興味ないでしょ。みんなじろじろ見るんだけどなんか違うし」
「そ、そうかなぁ。佳奈ちゃんの身体が好きってわけじゃないからね。」
「嬉しい!ねぇもう一回しよう!」
思い出せば出すほどわたしが完全にSEXを求めていた20代前半だったような気がする。やりたい盛りの20代、誰にでもある話だと思っていた。
「ねぇ、ちょっと咥えてよ」
「えぇ!ここ車の中だよ!」
「佳奈ちゃんのことが好きすぎてどうしようもないんだ」
「本当だ。凄いおっきい」
「見えないから大丈夫だよ」
ドライブの帰り道、わたしはあの人の勃起を咥えながら帰ったことも思い出していた。その日は、首都高の路肩に車を横付けにして助手席を倒されて犯すようにSEXされた夏の日だった。
「佳奈ちゃんにはかなわないよ。ちょっと寝よっか」
「凄いエッチ。興奮しちゃった」
「眠い」
「いいよ、少し寝よっか」
何てことをしていたんだろう。思い出すほど憂鬱がわたしを支配しているようだった。
全て事実だった。
若いとはいえ今思うとわたしは完全な変態そのものだった。みんなしていることだと思っていたけれど今の歳になって本当は全然違うことを大人になって初めて知ってしまっていた。
「手遅れなの?」
誰に向けることなく独り言を呟いてしまっていた。憂鬱に食事もとれず、止めようと思いながらずるずる辞めれないタバコを吸いながら本当にだめな女なんだと後悔ばかりがわたしを苦しめていた。
わたしは転職を繰り返し今の地位をようやく手にした36歳だ。小さなファッションメーカーから大企業を渡り今の会社でそこそこの地位を貰っている。都会の高層マンションをローンで買ってこれから部下の育成と会社の成長を目標に充実した生活を送っていた。そろそろ結婚も本当に考えないとまずいわと思っていた矢先だった。
それが、たった一枚の写真で全てを壊される恐怖に怯えることしかできず今日はずっと布団の中にいようと憂鬱に身動きができず途方に暮れることしかできなかった。
どれくらい時間がたったのか分からないけれど目が醒めると西日が部屋を暗くしているようだった。このままではいけない。明日、病院に行こう。そう思って今日の疲労に身体を委ね布団からでることなく何も食べずに憂鬱な思い出に苦しめられる隙間を埋めようと違う事を考えようと必死になっていた。
「あなた、夏にしかでてこないわね」
「そうかなぁ、いつも、誘っても断られるのは僕の方だよ」
「あやしいなぁ。まぁいいわ。美味しいものが食べたーい」
わたしは当時、他の男の人とも付き合っていたのは事実だった。あの人と違い大企業に勤める将来の小金持ちに相応しい真面目な人だった。
「日比谷にね、美味しいBARがあるの。この後、そこで飲もっか?」
「いいけど詳しいね佳奈ちゃん」
「うん、会社の人とね来た事があるんだ」
当時のもう一人の男と来たお店だった。でも全く悪びれる素ぶりはなかったと思う。あの人はあの人。彼は彼。わたしはそんなルールを勝手に決めて行動していた20代後半だったような記憶が蘇っていた。