〈不治の病〜治療用献体・笹木希〉-20
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『終わったのかい?』
ぶっきらぼうな婦長が部下のナースを連れて個室を訪れたのは、それから程なくしてだった。
『シーツをこんなに汚して……もう使い物にならないね』
婦長もナース達も、変わり果てた希を見ても然したる反応をみせない。
意識を失っている希から縄を解き、シーツやマットを手早く取り替える。
そして点滴を新しい物に交換すると、ナース達は婦長を残して個室から出ていった。
『……この娘の動画なら高く売れるだろうね。なんたって苛つくくらい美人だから』
婦長は口元を歪めて希を見つめていた。
相変わらず表情に変化は見られないが、その瞳には若くて美しい女性に対する憎しみが滲んでいた。
『コイツは逸材だからとことん使うぜ?骨の髄までな』
『……好きにしな』
踵を返す瞬間、婦長の顔は笑って見えた。
それは年増の嫉妬というよりは、残虐で冷血な悪女の本性の表れに思えた。
そこにもう一人の関係者が現れた。
希の肉体に執刀した工藤だった。
『術後検診に来ました……ん〜、化膿が始まった様子は見えない…か……』
凌辱に失神している希を見ても眉毛1つ動かさず、性器の縫合痕とピアスホールを淡々と診ている。
さすがは亜矢にも執刀しただけはある冷酷さは、直接に凌辱する者達よりも鬼畜である。
『大先生、俺達ののんちゃんに立派な逸物を与えてくれて、ありがとうございます……へへへへ』
『ん…亀頭肥大手術よりは簡単ですから、礼には及びませんよ』
少しだけ笑みを浮かべると、早くも個室から出ていく素振りをみせる。
そこには希という美女に対する興味は全く見られなかった。
『早くクリトリスを虐めてやりたいんだが……まだ駄目ですかねえ?』
『……もう少し安静にさせた方が無難だが、縫合痕に強い力を加えないなら大丈夫でしょう』
畜人達の顔が崩れたのは言うまでもない……何の為に防御膜でもある薄皮を切除したのか……それもまた言うまでもないのだから……。