『茜色の空に』-10
駅に戻る途中の公園で座って休んでいると、日も落ちかけ、茜色の空が広がる。
「きれーい。」
私はこの街の夕陽が大好きだ。太平洋が近く、赤く焼けた太陽が水平線に
沈んで行く様は、本当に美しい。
でも今日の夕陽は、美しいけど、二人が違う場所へ帰らなければならない
現実を突き付けて来ている様で、何だか切なかった。
「折角両想いになれたのに、遠距離かあ〜。」
しんちゃんがポツリと呟く。
「んー。でもさ、電車で2時間も掛からないし。中距離、ってトコじゃない?」
「・・。会いに来てくれる?」
そりゃ行くよ。そんな可愛い顔で覗き込まれちゃったら。
「うん。」
「僕も行くよ。」
自然に唇が触れ合う。
正直な所、私はがさつとゆうか、大雑把とゆうか、そういった所があるので、遠距離恋愛とか向いてない様な気がするのだが、しんちゃんとなら大丈夫。
そんな変な確信みたいなのがある。
だから、離れなければならないのは切ないけど、涙は出さない。信じてるから。
二人で同じ新幹線に乗り、別れを惜しみつつ先に降りるしんちゃんを見送る。
一人残された私は、急に淋しくなった隣の座席から目を反らし、車窓を見遣る。
まだ西の空は茜色の夕陽の名残りを残していた。