光の風 〈聖地篇・序章〉-13
やがて目に景色が映る。目を開けるのに苦労したが、肌に触れる柔らかい風に自分の居場所が変わった事を知らされた。
草木や花の香がする。小鳥のさえずりが聞こえてきた。
「リュナ、大丈夫か?」
「目がチカチカする。着いたの?」
「ああ、そうみたいだ。」
うすく目を開け、景色を見てみる。徐々に鮮明な映像が見られた。
緑に囲まれている。そこは道だった。空は快晴、鳥たちが上を通り過ぎる。
道は遠くに見える建物に続いているようだった。
「あれは宮殿?」
リュナは指を差す。道の続く先にあると思われる建物、カルサは遠い目をして頷いた。
「あそこが今から目指す場所だ。」
目指す場所はすぐそこに、もう目に見えている。しかしカルサの足は動かなかった。
まるで金縛りにあったかのように、宮殿を見たまま動かない。
少し違うカルサの雰囲気に、もちろんリュナは気付いていた。
「あ〜どうしよう!緊張して足が進まない。」
リュナはそう言いながら、心臓をさすって落ち着かせようとした。深呼吸を何度も繰り返す。
そんな彼女を見て、カルサは繋いだ手に力をいれる。それにリュナは反応して、カルサを見つめた。
情けないと苦笑いをしてみせる。
「大丈夫だ。一緒に行こう。」
リュナは笑顔で握りかえした。そして二人で歩きだす。
長い長い宮に続く道路は、不思議な力に包まれていた。それ以前に総本山自体が優しい力で守られているようだった。
しばらく歩いた先に宮殿に入る門が見えてきた。木製の背の高い大きな門。
見とれるリュナを横目に、カルサは門に手をあてる。
「カルサ?」
繋いだ手を離しカルサは両手を門にあて、押してみた。少し力をいれると、ゆっくりと開く。
「うそ…すごい、開いた。」
リュナは口をぽかんと開き見とれていた。開いた門の向こう側に人影が見える。
高貴な衣裳に包まれた男性。金色に輝く髪は柔らかく揺れる。二人の姿を確認すると優しい笑顔で迎え入れた。
「雷神カルサ・トルナス、風神リュナ・ウィルサ。ようこそ、御剣の総本山へ。」
リュナは視線を目の前の男性に向けたまま、カルサに寄り添った。無意識に服を掴む。