光の風 〈聖地篇・序章〉-12
扉には、おそらく国の名前であろう文字が書かれていた。
「私たちもさっき扉から出てきたのよね？」
歩きながらリュナはカルサに問いかけた。リュナより少し前を並ぶようにカルサは歩く。
「ああ。今向かっているのも、総本山の扉だ。」
ふーん、と頷いた後、リュナはキョロキョロ辺りを見回した。
「誰もいないのね。」
「まぁ、ここを知っている者がそんなにいないからな。…どうした？」
話あの途中、カルサは何かにひっぱられた感じがして振り返った。リュナがカルサの服を摘んでいる。
二人の足が止まった。
「あの、ね？不謹慎だって事は分かってるのよ？」
何か結論が言いだせず、リュナは焦りながら話し始めた。意味が分からず、カルサは頷きながら次の言葉を待つ。
しかし、カルサに見られている事でリュナはますます言い出しにくくなってしまった。
「だから、その…。」
「怒らないから言ってみろって。」
おもいっきりの子供扱いに脱力し、リュナは深いため息を吐いた。
そのおかげで彼女自身の変な緊張は取れたようだ。笑顔で思いを伝える。
「手を繋ぎたいの。」
その瞬間、カルサは頬を赤く染めた。リュナがはにかむ。
ゆっくりと控えめに左手を差し出す。カルサは思わず吹き出し、しっかりとその手を握った。
そして二人は歩きだす。今度は同じ速度で、お互い目が合うとそらす様に笑い前へ進んでいった。
愛しい人のぬくもりを掌に感じる。
「ここだ。」
ひとつの扉の前でカルサは立ち止まった。周りの扉と何も変わらない。
唯一違いがあるとすれば、何も書かれていない事だった。
「ここがそう？」
「ああ。」
笑顔でリュナに答えた後、視線を扉に向けた。だんだんと表情が無くなっていく。
そんなカルサをリュナは見ていた。色々浮かぶ疑問を聞けなくする表情。いくつもの思いを飲み込んだ。
リュナはカルサが思うよりも敏感に察していた。
カルサが振り向く、何事もないようにリュナは微笑む。繋いだ手を揺らしてみた。
「行きましょ？」
リュナの言葉にカルサはほほ笑み、やがて扉に手をかけた。ゆっくりと開ける。
眩しい光が二人を包んだ。目が眩み、思わず手で目を覆う。さりげなくカルサはリュナの前に立ち、壁になった。