受話器のむこうとこちらにひそむもの-1
私は小学三年生だった。
そのころ私ン家の電話は、私が生まれたころから使ってる黒電話だった。
ダイヤルを回して、電話をかけるやつ。
電話なんて、そんなものだと思ってた。
三年生になった時。
私は、ママからこんな事を教えられた。
「みね子チャン、よくおぼえておきなさい。
これからは、パパやママがいない時に、みね子チャンが かかってきた電話に出てお話することがあると思うの。
だけど、かかってきた電話に出る時は、まず『はい』とだけ言うのよ。
むこうの人の方から、『カナカタさんのお宅ですか?』って聞いたら、『そうです。』って答えるのよ。
でないと向こうの人に、『そうか。この番号はカナカタという家の番号なのか。』ってバレてしまって、ドロボウに入ってくることになるのよ。」
理由はよくわからなかった。けど、ドロボウに入られるのは怖くて、私はママの言いつけを守っていた。
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11月、だいぶ夕暮れが早くなったころ。
ひとりで家にいた私はベルの音を聞いて、あわてて電話のある薄暗い居間に駆けつけた。
「はい!」
私は、いつものとおり返事すると、電話の向こうから男の人が話しかけてきた。
男「もしもし、お嬢ちゃん。ママかパパか、大人のひとはいないかな……」
私「今、誰もいません。」
男「そうか…… じゃあ、お嬢ちゃんに話があるんだけど。」
私「はい……」
男「お嬢ちゃんは、『オナニー』って知ってるかな?」
私「お……おなにい、ですか? ……知りません。」
男「そうだね…… まだお嬢ちゃん、小さそうだもんね。
でもね。お嬢ちゃんもオナニーを知っておかないと、そろそろ困ると思うから、お兄さんが教えてあげるよ。」
私「はい……」
私は「お嬢ちゃん」と呼ばれたことで、なんとなくワクワクしていた。
男「じゃあ、まず パンツの中に手を入れてごらん。」
私「パンツの 中に……?」
私が戸惑っていると、
男「……さっさと言われたとおりにしろよ!」
電話の向こうで男の人が怒鳴った。私は怖くなって、パンツの中に手をサッとつっこんだ。
私の手にオシッコの出るワレメの、少し湿った感触が伝わってきた。
電話の向こうで男の人が言う。
男「もう少し手を奥に入れて、中指をお尻の方に近づけてごらん。」
私「はい。」
私は言われたとおりにした。すると、中指の先が当たった所が強く感じた。
私「んあっ………」
私の小さなうめき声を聞いて、男の人は電話の向こうでフフッと笑った。
男「いい所にたどりついたようだね。そのまま、その中指を左右に動かしてごらん。」
私「はい……」
私はおずおず中指を左右に動かしてみた。