受話器のむこうとこちらにひそむもの-3
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私は五年生になった。
思春期ヅラしてきた私は、時々近くのお店の軒先にある、赤電話に行っては友達とおしゃべりするようになった。
別に親に聞かれたくない事を話してたわけじゃない。
電話でちょっと長くおしゃべりしていると、
「タダで電話は使えないのよ。」
「パパがご用で電話をかけて来て、話し中になってたらどうするの。」
なんてママのお小言が聞こえるからなんだ。
もうそのころには、赤電話は少数派になっていた。
そのせいか、いつ行っても使う事ができた。
電話の中に、あらかじめ数枚の10円玉を仕込んで長話をするんだけど、すぐになくなってしまう。
電話はタダじゃないことを実感させられた。
それに友達の方でも、
「ママが怒ってるから、これで切るね。」
と言い出しはじめる。
結局、会っておしゃべりした方が気楽だったかも知れない。
だけど、私は本当は電話で「ぽるの」なおしゃべりがしたかった。
そんな相手をさがしていた。
できれば、全然知らない男の人がよかった。
ある日の午後、私は書店でレジに並んでいた。
私の前に、高校生のお兄さんがいた。
そのお兄さんは書店で時々見かける人だ。
そのお兄さんが「カメラ雑誌」を手にしては、ヌード写真のページを見ていることを私は知ってる。
書店のオジサンとお兄さんは、何か言ってたあとお兄さんは出て行った。
「はい、お待たせしました。」
書店のオジサンが私を呼んだその時、私はレジの中にあった一枚のメモに目がとまった。
ハコクラ トシスケ様
177━ μ μ μ μ
それは注文した本の連絡先だった。私はその名前と電話番号を暗記してしまった。
それからだいぶ経った、夏休みの終わり頃。
パパのお姉さんが、急に手術しなければならなくなったとかで、パパとママとで遠くの病院へ付き添いに行く事になった。
パパとママは、今晩帰って来ない。
こんな日なのに、私は誘惑に負けてしまった。
夕日が沈んだころ、私は赤電話に向かった。
「177の μ μ μ μ ……」
ダイヤルを回すと、受話器から呼び出し音が聞こえて、
「はい、ハコクラです。」
男の人の声がした。私は、
「あの、トシスケさんですか?」
と聞いた。
「はい、ボクがトシスケですが……」
私はもう、思いきって言った。
「トシスケさん、今 ひとりで、オナニーしてたでしょ。」
私「オナニーじゃわからない? センズリとか、マスカキとか言った方がいいのかな?」
ト「…………」
私「家に誰もいないスキに、エッチな写真見ながらおチンチンシコシコして、気持ち良くなってるんでしょ。」
ト「…………」
トシスケさんは何も言わない。でも、受話器からはトシスケさんの荒い鼻息がブォ〜ブォ〜と聞こえてくる。
だいぶ興奮してるみたいだ。
私「トシスケさん、今 私もね、電話ボックスの中でオナニーしてるの。」
ト「………… え?」
私「私、小学生なんだよ。小学四年生になれば、女の子だってイヤらしい本を見ながらオナニーするんだよ。」
ト「………… きみ、誰なの?」
私「トシスケさんって、いくつくらいからオナニー始めたの?
どんなヌード写真見ながらおチンチンシコシコしてるの?」
ト「誰…… キミは誰なの……」
さっきから私の正体を知りたがっているトシスケさん。でも私はそれには関わらずに、自分の言いたいことを言い続けた。
私「トシスケさん、もう白いオシッコ出そうなんでしょ? でもまだ出しちゃダメよ。トシスケさんが私にエッチな事、何も言ってくれないんだもん。」
ト「………こ……このエロ小学生め……お前の……お前のワレメに、この縄跳びの柄を突っ込んでやる!」
私「やだ……そんなの。私、トシスケさんのおチンチンを入れて欲しいのにぃ〜。」
ト「うるさいッ! お前みたいなスケベの固まりには、ケツの穴に特大の浣腸をぶち込んで、クソまみれにして……」
私「ダメよ、そんなの…… ケツの、ケツの穴にもトシスケさんのおチンチンを入れて、白いオシッコを流し込んで……」
「ちょっとアナタ、ウチのトシスケに何させてるのよ?!」
受話器から突然、荒々しい女の人の声がした。