幽霊と一緒 〜登校編〜-1
ある日転校してきた転校生から屋上に呼ばれ
「じゃあ契約決定だね」
などといきなり言われれば驚かない人はいないだろう。福の神や勝利の女神に憑かれるならまだしも幽霊に憑かれるなどとは以前は思ってもいなかった。
能力の高い霊能力者を監視する“遣霊使”であり幽霊でもある六道疾風(はやて)により半強制的に契約させられた翌日。
容姿・頭脳ともに平均的で髪が少し長い事が取り柄の霊能力者である神道零(ぜろ)は布団の中で熟睡していた。
ピリリリリ
不快な電子音を放つ目覚まし時計のスイッチを零は切り布団から頭を出した。
(昨日の“あれ”はやっぱり夢だったんだな)と自分に信じ込ませ、朝食の準備をするため布団から出る。「………。」
部屋を見回したその瞬間零は固まってしまった。理由は簡単である。たった今自分に信じ込ませたことが全て覆されたからだ。零の視線の先には疾風が宙に浮きながら寝ていた。
「起きろ」
そう言いながら疾風の頭を叩く。霊体の状態ではなく具現化されているので叩くのは可能だった。
「ん?あぁオハヨウ」
呑気な幽霊だ。しかもこれで役人なのだからあの世の社会には問題が大量にあるのではないだろうか。
「朝ご飯は?」
起きるとすぐに朝食を要求する疾風。もしかして“契約”とは僕がこいつの衣食住を手配するという契約じゃないのか?
ちなみに契約方法は[血を飲む]や[心臓を交換]などといったファンタシーな要素は一切無く、ただの書類にサイン・拇印をするだけだった。なんと簡単でシンプルなんだろう。
「………手伝う気はないのか?」
このままでは確実に食事や弁当を全部僕が作るはめになってしまう。
「こっちは仮にもお客さまだよ」
と着替えながら遠回しに拒否された。
「いや…同居するなら料理くらいは手伝えよ。」
パジャマのままで文句を言う。早く着替えないと遅刻することに零は気が付いていない……。
「そんなことより早くしないと遅刻するよ」
「……あ」
遅刻の可能性大
[〇〇座の方は今日はあまり良くないことが起きるでしょう。]
「うわぁ最悪。だから占いは嫌いなんだよ」
疾風は朝のニュースでよくある[星座占い]の結果でショックを受けていたが顔は笑っていた。まず占いは幽霊に通用するかが気になるが……。
朝食の件についての結果は呆気ないものだった。あの後も口論は続いたが疾風の「死神を呼ぶよ」の一言で零は降参した。
そもそも[死神]とは現世に留まる魂や高い霊能力を削除・管理する役割であの世にも現世にも属さない完全中立する立場である。つまり零は高い霊能力を持っているため死神の管理データに記載されているため立場的には零が弱い
「なぁ」
「ん?なに」
納豆を混ぜながら返事をする疾風。
「[疾風]って名前は本名なのか?」
さすがに幽霊の名が[疾風]とは思えない
「いや違うよ。ついでに言えば名字の六道も違うし」 それでは全部が偽名じゃないのか?と思ったが幽霊に偽名も何もない
「え、じゃあ本名は?」
「魔風」
「まかぜ?」
「簡単に言うと[恐ろしい風]ってこと」
つまり[魔]を[疾]に変えて爽やかにしたわけだ。
「あと六道ってのはあの世での役職のだよ」
人は死んだら六つの世界のどれかにいくと言う[六道輪廻]の六道では無いらしい。
「つーことはお前はその手の部署の役人ってことか?」
疾風は納豆を混ぜながら「う〜ん」と言っている。
……さっきからずっと納豆を混ぜているが食べないのだろうか