10.発覚-3
大きなベッドであかりと英明は全裸で抱き合っていた。
ああ、と甘いため息をついたあかりは、仰向けにした英明にのしかかり、その中心にあるものを両手で包み込んだ。
「あ、秀島さん……」
「お願い、あかりって呼んで……」
あかりはそう小さな声で言うと、手で握ったそれを口に咥え込んだ。
あっと小さな叫び声を上げて英明は思わず顔を上げた。
濃厚とも言えるようなあかりの舌使いにもかかわらず、英明のものはなかなか硬くはならなかった。彼にとってその行為は性的な気持ち良さを覚えるものではなく、普段隠されている場所を舐められる恥ずかしさとぬるぬるとした違和感を伴ったどちらかと言うと嫌悪感を感じるものだった。
長い時間そうしてもらうことが申し訳なくて、英明はあかりの口をそこから離させると、枕元に置いてあったプラスチックの包みを手に取り、あかりに背を向け膝立ちになってそれを自分のものに被せ始めた。いつものようにそれには長い時間が必要だった。
あかりはそのまま英明の背後で仰向けになり、ケットを首までかぶって待っていた。
やがて振り向いた英明はケットをそっとめくり、あかりに覆い被さってゆっくりとキスをした。そしてそのまま柔らかな白い身体を上から下に口を滑らせていった。さすがに美穂と違ってつややかですべすべとした肌合いだった。その若さを目の当たりにした英明は、普通はこんな状況だったら男は大興奮するのだろうな、と冷静に考えていた。
あかりの両脚を抱えて、英明は舌でその秘部を舐めた。小さな粒や潤った谷間を丁寧に舐め、唇で挟み込んだりした。そのとろとろとした粘膜が舌に絡みつく感触を英明はあまり好きではなかった。本やネットからの知識でこういう行為の時にオトコが女性に対してすることはいろいろと知っていたが、自身がそれに興奮することはもちろん興味を持つことさえほとんどなかった。しなくて済むことならこれからずっとでもやりたくないと思っていた。
しかしあかりは全身で身もだえしながら息を荒くしていた。すでに彼女の身体には汗が光っていた。英明はその様子を観察しながら、この子は僕の気の乗らないこんな行為でも興奮するのか、よほど身体が求めていたんだな、と思い、複雑な気分だった。そしてこの後自分も無理な演技でそれに応えなければならないのかと思うと気が重かった。
挿入には時間が掛かったが、あかりのその場所が異様な程潤っていたお陰で、どうにか二人は繋がり合うことができた。あかりは少し涙ぐんで上になった英明を見つめた。英明はそのままキスをして、腰を動かし始めた。
初めの内はああ、と喘ぎ声を上げながら気持ち良さそうに身をよじらせていたあかりだったが、英明が長い時間ただ機械的に動き続けるうちに、少しずつ身体の火照りが冷めていくのを感じているようでもあった。
そして全身に汗をかき、唐突にううっ、と呻いて英明は腰の動きを止めた。
はあはあと大きく胸を上下させて、英明はあかりに身を預けた。あかりはそっと両手を英明の背中に回した。
英明の息が落ち着くのを待って、あかりが彼の耳元で囁いた。
「ありがとうございます、教頭先生……」
そして二人はゆっくりとキスをした。
◆
朝から雲が空一面を覆い、時折雪のちらつく二月のとある昼下がり。
美穂と誠也はホテルの一室で熱く火照った身体を重ね合っていた。
ベッドが激しく軋む。荒い息づかいが部屋の空気をかき乱す。
「ああ、あたしもうイってる! 誠也も来て! 一緒にイって!」
「美穂、美穂っ!」
俯せになった美穂の身体を背中から抱きしめ、激しく腰を上下させていた誠也はすぐにその全身を震わせながら顎を上げてうめき声を上げた。
どくっ! どくどくっ!
いつもの誠也の熱い想いが強烈な勢いで美穂の体内に流れ込み、彼女の身体をとろけさせた。
「ああーっ! 誠也! 熱い! 中が熱い!」
「美穂っ! ぐううーっ!」
二人は一つになったまま同じように身体をびくんびくんと激しく何度も波打たせた。
誠也、誠也、と連呼しながら、美穂はその逞しい身体を抱きしめてしくしくと泣いていた。
「ど、どうしたの? 美穂」
誠也はおろおろしながら、まだピンク色に上気したままの柔らかな美穂の身体を抱き返した腕に力を込めた。
「胸が痛い、締め付けられる……」
「だ、大丈夫?」誠也が心配そうに言って、小さな子供を慰めるようにその髪を何度も撫でた。
「好きなの、誠也、好きで好きで涙が止まらなくなるの」
誠也はしばらくの間、黙ってその身体を抱きしめていた。触れ合った美穂の心臓の激しい動きが誠也の胸に届いていた。