The Disappearance of kira-2
階段を降りてくる靴音は、二人。
ドアが開かれ、檻の鉄の扉が重い音をたてて解錠されても、少年は表情を変えずにディスプレイを見つめている。カメラの「眼」が瞬時に探知し、PCには肉の絡み合う獣たちの姿が再生され、肉と淫水が織りなす淫靡な音楽がスピーカーから流れ出した。
少年の檻にやって来たのは作業ズボンのポケットを膨らませた大柄な男と、見るからに精力の有り余った脂ぎった肥満体。
ベッドの上の少年を見るなり、肥満体の男は「おおっ!」っと奇声を発した。
「いやいやいやっ、これは上物。まさかこれ程とは………さすが『狩人』。恐れ入った!」
脂ぎった男は今にも涎を垂らしそうな下卑た薄笑いを浮かべて少年に歩み寄り、その穢れのない純白の柔肌に目を瞠る。少年は折れそうに華奢な首を男に向け、興味なさそうに半開きの眠たげな瞳を泳がせた。
男は少年のアッシュブリーチの髪を無骨な手で遠慮無くまさぐると、少年の体臭を嗅ぐ。
搾りたてのミルクのような芳香とわずかな汗。脂ぎった男はうっとりとするようにその表情を緩ませた。その指はさらに少年の滑らかな首筋を、華奢な肩を、柔らかい二の腕を這う。
首に巻かれた深紅の首輪以外には何一つ着けていない全裸。左の耳に血のように紅いミャンマー産ルビーのピアスが光る。
陰茎さえなければ絶世の美少女だが、匂い立つ魅力の性質は明らかに未知の物。
10代初めの少年だけが持つ中性的な容姿は独特の魅力を放つ。
その睡たげな瞳は儚げで蠱惑的。薔薇色の唇は幼さを感じさせないほど艶然としている。
そんな容姿にも拘わらず、どこか無邪気で無垢。纏う雰囲気は可憐で愛らしい。
「生きているうちに『ダイアモンド』に出逢えるとは思わなかった………しかも何人ものショタを調教して糞を喰らう性奴隷に堕として来た趙さんの事だ……これも「仕込み」済みかい?」
「おい、キラ、お客様だ。ちゃんとご挨拶しろ。心を込めてな」
キラと呼ばれた少年は微かに頷くと、子鹿のような脚を組み替えて素足を床に落とす。そのまま板敷きの床をいざり寄って肥満体の男の足下にまで這い、その睡たげな瞳で見上げて小さく頷いてから躯を伏せ、土下座をするように男の履いている革靴に顔を寄せた。
愛らしい薔薇色の唇が開き、真珠のような歯が光る。
その中から顔を出した舌は幼く、ピンク色のナメクジを思わせるヌルリとした動きで。
男の革靴を舐め始めた。
まるで主人にじゃれつく犬のように。
少年の背中にうっすらと筋肉が浮かび、少年特有の「翼の痕」が影を落とし、肢体は柔らかくうねる。
白桃のような小さな双丘は可愛らしいが、その動きはどこか淫らで蠱惑的だ。
まるで何かを求めているような。何かをねだるような、腰つき。
肥満体の男が陶然となってキラを見下ろしている間に、作業ズボンの大柄な男はチェストの上に様々な瓶、アンプル、錠剤、パッケージ、注射器やスプーンを並べ、アルコールランプに火を灯した。
今夜のキラの「ご馳走」を用意するために。
あ、あ、これ。「元気の出るお薬」だ。あ、また、血が。ボクの血がお注射の中でブクブク吸い込まれたり入れられたり。え?もう一本。二本。三本って、ちょっと、待って。六本。さ、い、い、ん、ざいっ、ッて?……催淫剤。へええ、エッチになるお薬。ボクそんな事しなくても、じゅう、ぶんっ、エッチ。まだ打つの?……クラゲ?って、あの海にいる棘のあるくにゃくにゃ。筋弛緩剤って、ナニ?……それ、そんなトコ。お尻の穴にもっ?……柔らかくなるって、もともとボクのカラダ、柔らかいけどっ。ああんっ、く、くすぐったいっ。塗り薬。そんなにっ、そんなに奥にまでっ。あ、それ、「ヌルヌル」です。あれ?「ヌルヌル」に混ぜるんですか「元気の出る薬」。あ、あ、あんッ。冷たッ。あ、それ知ってます。ディックの、時に、吸ったの。やっぱり鏡の上なんですね。あ、オジサンも、趙さんも吸うんだから、ボクも吸っても、だ、い、じょ、うっ、ぶっ。…………スウっ、って。………………………………あっ、あっ、あっ、来ました。すぐっ、来ましたっ。