第1話「史性寮の先輩たち」-1
『学園』の正課がない夏期は、寮生活にて懈怠がはびこる宿命だ。 この時期をいかに生徒を引き締めて乗り切るかは『寮監』の腕の見せ所であり、また最上級生の課題でもある。
Bグループ生が研修に出発した夜。 寮監室では5人のAグループ生が膝を付き合わせて相談中だ。
「Cが帰ってくるのはいつだったかしら」
「明後日です。 現地をみてきた寮監様によると、全員無事に帰ってきそうな雰囲気だそうです」
「そう……重畳。 プログラムを用意する甲斐があるわ。 自由だからって気を抜かないよう、きっちり躾けるのはわたくし達の務めですもの。 ところで『アコ』さん、頼んでおいたものは用意していただけて?」
「ええ、寮長に言われた通り、一応ここ4年の夏季プログラムを揃えてみた。 去年が『ご挨拶徹底週間』、2年前が『乳首勃起週間』、3年前が『体罰推進週間』、4年前が『変顔展示週間』……毎年違う内容で組んでたんだねぇ。 てっきり3つくらいプログラムを用意してローテーションしてると思ってたから、ちょっとビックリ」
「あ、でも『湿日寮(しつじつりょう・3組が暮らす学生寮)』はそうらしいよ。 3年ごとに同じことやってるって」
「こういうのって、やらされる方は意味不明で、自分達が悲劇のヒロインだって勘違いしておけば済むんだけど……ぶっちゃけ、ひたすら従っておけばいいから楽チンなんだよね。 むしろ中身を考えるウチらの方がキツいっていう」
「まあまあ、そういわずに。 寮に入って日が浅い方もいることですし、とりあえず過去のプログラムの中身、確認しましょう。 わたくしも企画側に回ったのは今年が初めてなので、個人的にも先輩方のマニュアルに興味があります。 順番に全部目を通す時間は……大丈夫そうですね。 では『ご挨拶徹底週間』からいきましょうか」
「みんな、1部ずつとって隣に回してね。 残部はないから大切にしてよ」
パラパラパラ。 アコと呼ばれた女性――史性寮【A5番】、Aグループ3年目で史性寮6年目の古参寮生――は、A4用紙5枚ばかりをホチキス留めした冊子を配る。 表紙には『31回生・夏季後輩指導週間案』と仰々しく記してあった。
……。
『31回生用・夏季後輩指導に関する運用マニュアル』
サブタイトル『ご挨拶徹底週間』
【目的】 1つ。 普段朝食前に『ご挨拶』でもって上下関係を知らしめているが、この『ご挨拶』を日常に組みこむことで、より一層目上に従うよう後輩を躾ける効果が得られる。 1つ。 繊維質により便通を促進し、健全な肉体を涵養する。 1つ。 便の性質に習熟し、排泄物への抵抗感を減退させる。
【手法】 〜朝のご挨拶〜
従来であればケツマンコを高く位置した上で脱糞させ、糞便と残便の確認により健康チェック、目上による肛門洗浄および洗浄した汚物を眼前の下水溝に流すことで、上下関係を徹底している。 当該週間においては毎回『上級生が指定したポーズで各自専用のチリトリに脱糞』し、『チリトリを口に咥えて健康チェックを受けに行かせる』ことで、より積極的に排泄物を扱わせる。 上級生による健康チェック後は、将来自分が健康チェックする際の練習という名目で、全員に『至近距離で自分の排泄物を観察させ、匂い、形、色、味、その他観察結果を報告させる』。 この作業により自分の排泄物による『ご挨拶』に対して、必要性を再確認し、誠意を養う。 観察結果報告後は下水溝に各自で便塊を廃棄させる。 なおチリトリから零れた便塊、液状便の類は原則として手を用いず、各自の口器でもって処理するものとする。
【手法】 〜寮内でのご挨拶〜
寮内で先輩とすれ違う際、必ず後輩から所定の礼をするのがマナーである。 先輩が1つ上回であれば45度、2つ上回であれば90度の礼で構わない。 ただし挨拶時には膣ないし肛門、或は口腔や鼻孔といった本来恥ずべき部位を敢えて晒し、自分を紹介する工夫が必要になる。 当該週間では、先輩が率先して後輩に挨拶をしかけることで『先に挨拶するべき後輩であるのに、挨拶を怠った』状況をつくる。 この状況においては後輩が先輩に返礼するという無礼が発生するため、後輩はより重度の『ご挨拶』で自分を紹介する。 すなわち自分の排泄物を提示することでもって無礼を詫びるものとする。 便塊の大きさは問わないが、その場で自分の手のひらに脱糞、便を頭上に掲げつつ90度のお辞儀を義務付ける。 先輩は便塊に関する感想を本人の口から言わせたり、便臭をしこたま嗅がせたりと、便を介したコミュニケーションで上下関係を再確認したのち、本人による便の自食いによって脱糞処理を済ませるが、これをもって『ご挨拶』の完了とする。 なお、後輩に先に挨拶されたケースについては、上記の限りではない。
【手法】 〜寮外でのご挨拶〜
寮庭、校庭、部活後に寮へ帰る途中など、寮の外ですれ違う際、後輩から駆け寄って礼をするのがマナーである。 礼に際しては、上級生の埃を払う、靴の泥を落すなど、自分を呈して上級生に尽くす姿勢を伴わねばならない。 当該週間では、上級生の肛門の便滓を舌で掃除することをもって『ご挨拶』とする。 下級生は上級生の指定した姿勢、例えば仰向けに寝そべった『和式便器』の恰好、膝立ちのまま背後に傾いて手で支える『ビデ』の恰好、或は尻たぶを掌で拡げながら肛門に顔を押しつける『洋式便器』の恰好をとり、ご挨拶終了の許可が出るまで肛門を舌でほじり舐める。 上級生はなるべく脱糞後の便滓を完全に拭わず、ご挨拶のアクセントとして残しておくことを意識する。 また、ご挨拶をさせている最中の脱糞は自粛すべきではあるが、放屁、放屁にともなう微量の脱糞は是を推奨する。 肛門がふやけるまで徹底的に舐め掃除することで、上下関係を再確認させる。