復帰、そして新たなる波紋-6
「若葉、ちゃん。」
ケータイを不安そうに目をやるも表示されるのは「新着メール無し」の文字のみ。
僕、余計な事言っちゃったかなぁー。未だ今朝の彼女の罵声が耳から離れずにいて。
一条君から彼女のお爺ちゃんの事を聞いて、やっぱり相当ショックなのだろうと、きっとメールも電話もないのもその為だと。
「電話、してみよっかなぁー。」
やっぱり心配だし、…でも「そのうち放っておけばそのうち向こうから連絡が来る筈だからさー」と、一条君が言うから。
電話は断念し、そうこうしていると彼女の家へ着き。
「若葉、ちゃん…。」
今朝はあんな事言われちゃったけど、それでもやっぱり。
僕があれこれ心配しても仕方がない、彼女を信じて待つのも方法の一つ、それは分かる、でも!やっぱり自分の大切な人、様子くらい見ても大丈夫だろう。
そう考え中へ入ると。
「あら、風馬君。」
「おばさん。」
野菜の入った段ボールを運びつつ僕の方を向き声を掛ける。
見るとまだ沢山同じような物があるようで。
「これ、全部向こうに持ってくんですか?」
「え、えぇーそうよ。」
確認が取れた所で僕も手伝う事に。
「まぁーそんな良いのに、でもありがとう助かるわ。」
「いえそんな!丁度体が鈍ってた所だったんで、それにお爺さんが亡くなって色々と大変でしょうから、何かあればいつでも言って下さい。」
「うん、本当に有難う。貴方は昔からそうだよね、困った人は放っておけないってゆーか何だか純粋で。」
「いいえ、ここは若葉ちゃんのお店でもあるし。」
そうこう話しているうちに段ボールは全て片付いて。
「はい、どーもねいやーおばさん助かっちゃった。」
「いえ。」
「所で今日はどうしたの?」
「あぁそうだった、あの若葉さん、何だ若葉さんって若葉ちゃんの事で。」
「あー今朝は本当に御免なさいね。」
「今はどうしてます?まだ電気もつけず引き籠って。」
「うーん、おばさんもてっきりカップ麺でもすすってるかと思ったら違ったのよ。」
「?と、申しますと。」
おばさんからさっきまでお客さんが見えて、娘がその人を部屋へ招き入れ、楽しそうにお茶して、どこかへ行ったって。
へぇー、じゃー若葉ちゃん立ち直ったんだ。
安心は出来たけど、同時に引っかかる事も。
「それで?そのお客さんって誰です?」
「うーん誰だっけ、おばさんも忙しいから新しく店を立て直すのに、えーとぉ。」
そういわれると何だか悪い気がしてきた、誰だ、若葉ちゃんが訪れて元気になって外出まで誘う人って…。
僕なりに見解する。
……。
あぁ、伊吹さんか!
彼女なら若葉ちゃんの親友だし、心配して来て、うじうじしてる彼女に一発喝を入れて半ば強引に連れ回しそうだし(笑)
そう思い、念の為確認の電話をする。
「バカなの?」
「いや、だって…。」
「そりゃーまぁー心配だしいつまでも過ぎた事言ってたら喝入れるでしょうけど。」
「違うの?」
「うん、私ならバズーカで扉破壊して捕獲用の網で。」
「分かった分かった、それで今日家に来たの?若葉ちゃん家に。」
「私を疑ってるの!?その時間帯ならずっとバレーの練習をしていたわ、他のバレー部員に聞いてみれば分かるわ。」
「………、そう、分かった。」
疑ってるって、何の事件だよーもう。
突っ込む気にもなれず、そのまま挨拶して電話を切った。
…にしても可笑しいなぁー、僕はてっきり伊吹さんに励まされたものだとてっきり…、では他に誰が、一条君…な訳ないか、ついさっきまで会ったし、あーでも彼の家から走っていけば、……いかんいかんんもぅ伊吹さんのが写ったではないか!早乙女さんかな、でも彼女は知ってんのかなぁーお爺さんが亡くなった事。稲葉さんか!でも彼女だって知ってる訳もないし、それに知ってたとしても彼女を励まして一緒に仲良く出掛ける何て事は、
…まさかあの従兄妹じゃ!彼ならお爺さんの事も励まして外出する事だって…、でも彼は元々離れて住んでる訳で、この前の学校祭だって仕事でたまたま近くを通ったとか。
「あっ、思い出した!」
「っ!」
そこでナイスタイミングでおばさんが来客者の名前を思い出したようで。
早速彼女に詰め寄り尋ねると…。
我が耳を疑う羽目に。