ま-5
仕事を終えて、三浦さんが予約してくれたお店に向かうと
すでに三浦さん以外の男性は来ていて
三浦さんは出張の報告で遅れるという。
女の子たちのあからさまな落胆に可笑しくなって
三浦さんに会うという緊張が少し溶けた。
乾杯をして、知っている顔も知らない顔も自己紹介して
「今度ゆっくり旅行で神戸においでよ。俺らが案内するし」
そんな風に話が弾みだしたころ、
お店のドアが急に開いて風が店内に吹き込んだ。
それと同時にカランとドアベルが小さく鳴って
冷たい風と共に三浦さんが入ってきた。
「ごめん、遅なった」
急いできたのか、着くなりネクタイを緩める。
外は寒いのかコートにまとわりついてきた空気はひんやりした。
「遅いですよ。三浦さん」
女の子たちの黄色い声に、優しい顔で笑いながら片手でそれを遮った。
「ホンマごめん」
「三浦さんの席、こっちですよ!」
女の子が用意したその席を一瞬見て
そのあと、スッと迷いもなく私を見つめた。