ま-1
タクシーを降りて、無言の空気は
冬空の寒さにキンと冷えた。
私のほうを見て、いかにも自信ありげにそして優しく笑いかける。
でも、腰に回したその手が必要以上に力が入っているのを
私は気が付いちゃった。
私を安心させたいんだ。
この行動が、間違いなんじゃないかと私に考えるスキを与えないように
自信ありげに私に笑いかけてる。
そんな三浦さんが少しだけかわいく思えて。
自信満々のこのオトコが・・・
三浦さん自身も本当は少し不安なのかもしれない。
でも―――
このオトコに本気にはならない。
大丈夫。
本気にはならない。
確かに神戸の男でもいいと言ったけど
何の約束もしない遠距離恋愛をする気にはならない。
しかも、付き合おうなんて言われてない。
私からも言うつもりもない。
このオトコと付き合ったら、きっと私はボロボロになる。
好きになって好きになって
会いたくて会いたくて。
仕事で忙しい三浦さんと会えない時間を嫉妬に費やす。
そんな恋愛はもうごめんだ。
大丈夫。本気にはならない。