だ-3
駅前のウィクリ―マンションの部屋の前まで送ってくれて
「どうぞなんて言いませんよ?」
ぶっきらぼうにそういえば
「そこまでは期待してへんよ」
と、笑った。
「部屋に入って鍵を閉める音を聞いたら帰るし」
ポケットに手を突っこんだまま、優しく笑う。
「じゃぁ、ご馳走様でした。おやすみなさい」
そう言ってドアを閉めようとした瞬間
「あ、そうや!」
と三浦さんが少し大きな声を出す。
「なんですか?」
ビックリして振り返った瞬間
身をかがめた三浦さんの綺麗な顔が目の前にあって
そっと触れるだけのキスをする。
一瞬、その余韻に浸って
ハッと気がついて、身体を離した。
「何・・するんですかっ」
「忘れ物」
目を細めて私の唇を親指でなぞった。
「おやすみ」
そうほほ笑む三浦さんを残して
私はドアをバタンと閉める。
玄関から動けないままに、ドアに寄り掛かっていると
しばらくして、廊下を歩く足音がした。
もう・・・
心がかき乱されて、神戸の1日目は良く眠れなかった。