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《見えない鎖》
【鬼畜 官能小説】

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〈弱虫の決意〉-5

「……嫌です…私、もう嫌なんです…ッ!」


[撮影=レイプ]の図式しかない花恋は、手酷い暴力に曝されるかも知れないと怯えつつ、孝明に撮影の拒否を口にした。

拳を握って突っ張られた腕はプルプルと震え、俯いた顔は怖くて強張っている。

誰にも知られないうちに済まされるレイプなら、自分さえ黙ってれば英明には知られたりしない。
しかし、いつか知られるかもしれないAVという一種の“記録媒体”への出演は、なんとしても受け入れられなかった。

健気であり、そして愚かにも程がある花恋は、生きる意味を英明の彼女でいられる事のみに見出だしていた。


『……あの…え〜と……それってどういう意味かな?』


意外にも孝明は声を荒立てたりしなかった。
それどころか今にも泣き出しそうな花恋の様子に、どうしたら良いのか分からないといった風にしている。


『なんか話が見えないな……花恋ちゃんの本音を聞かせてくれない?』


またも意外な反応が起きた。
恐い人だと思っていた孝明は自分の方から花恋に歩み寄る姿勢を見せ、なぜ拒否をするのかを聞いてきた。


「……あ…あの……ッ」


チラリと上目遣いで花恋は孝明を見た。

腕組みをしたまま背もたれから背中を離した孝明は、不機嫌さなど微塵も見せずに花恋を見つめていた。
真っ黒なサングラスの奥に見える目には軽蔑は感じられず、本心から理由を知りたいと思っているという真摯な気持ちしか無いように思えた。


「あの…実は私……」


勇気を振り絞って、これまでの経緯を話始めた……盗撮やレイプ、強制売春の輪姦、そして自殺未遂……それを聞いている孝明は唸りながら俯いたり、顔を上げながら無精髭をボリボリと掻いて、溜め息を吐いたりしている……やはりそこには軽蔑や侮辱の感情は見えず、目の前の少女に起きている不条理な苦しみに、居た堪れなくなっているように見えた……。


『つまり……君は自分の意思で此所に来たんじゃないってコトか…?』

「違います!私は…何も知らなくて……ただまたレイプされるんだなって……どんなに嫌でも逆らえないし……」






いま会ったばかりの男性に、しかも性行為を撮影し、それを売る事を生業にしている男を相手に、初めて花恋は自身の悩みを打ち明けた。
いや、もしかしたら他人の“恥態”を見る事に馴れている男だったからこそ、花恋は話せたのかもしれない。

羞恥に直結する苦悩を曝け出しても、きっと過剰な反応はしないかも…?

初見の印象とはまるで違う孝明の人間性に、何処か花恋は惹かれたのかもしれなかった。



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