意外な展開-4
「18歳って、あと何年我慢しないといけないのよ。あたしには無理だわ」
「小学生全員が未経験なんて、うそでしょ」
「それって、園児の間違いじゃないの?」
「やっぱりおかしいよ」
銘々がそんなことを口にしたが、意外と博識の康太の次の発言がクラスメート達を黙らせた。
「それってパラレルワールドじゃないか!優衣、本当だとしたらとんでもないことだぞ!」
「パラレルワールドォ〜?」
驚いたクラスメート達が一斉に口を揃えた。
「って、なに?」
そう口にしたミナミ先生を筆頭に、その概念を知らなかった者達に康太は説明した。
「パラレルワールドってのは、幾つかの同じ世界が、同じ空間に重なりあってるって考えなんだよ」
「???ごめん、わかんない。文系にもわかるように説明してくれる」
頭を捻ったミナミ先生が康太に頼んだ。
康太は、SF好きのクラスメートの助けを借り、四苦八苦しながら時間軸の僅かなズレで同一空間に別の世界の存在が可能なこと、その時間軸の違いで、同じ世界でも少しづつどこかが違っていることを説明した。
「やっぱりパラレルワールドだったんだ…」
優衣自身は、SF好きな父親の蔵書を読んでいたこともあって、その概念は知っていた。しかし、康太の説明を聞いて改めて愕然としていた。
そしてもう一人愕然としている者がいた。康太の話を聞き終わり、頭の中を整理しようとしたミナミ先生が、今の今まで忘れていた、とても重要なことを思い出したのだ。
「あ、あたし、優衣ちゃんが転校の手続きに来たときに、オマンコに指を淹れて掻き回してあげたよ。そのとき、優衣ちゃんたら潮を吹いたんだ…」
それを思い出したミナミ先生の顔は蒼白だった。
「ゆ、指は?指は何本だった?」
康太はそれが気になった。
「ゆ、指2本、終わりの方は、指3本…」
ミナミ先生の発言に、どよめきが起こった。
「処女だったらあり得ないな」
康太が代表して答えた。いくらセックスクラブのキャプテンでも、処女を相手に、膣の中を掻き回して潮を吹かせるのは無理だった。この康太の言葉は重かった。
「まだ信じられないけど、あなたは別の世界の優衣ちゃんなのね…」
今のやり取りで、優衣の突拍子もない話に信憑性がもたらされた。
「えっ、だったら、処女の優衣ちゃんはどうやってこの世界に来たの?それに、元々この世界にいたエッチな優衣ちゃんはどこに行ったの?」
クラスメート達がざわつく中、ミナミ先生が肝心なことを聞いた。
「こっちの世界の優衣は、多分、入れ替わりに向こうの世界に行ったと思う。処女の優衣がどうやって来たかは、優衣に聞かないと」
康太の言葉で、クラスメート達の視線が一斉に優衣に集まった。
いつ入れ替わったか?
康太の説明を聞きながら優衣もそれを考えていた。一つだけ思い当たることがあった。
「取り合えず、優衣ちゃんの昨日の行動を教えてくれる」
ミナミ先生に促されたこともあり、優衣は頭を整理することも兼ねて、転校の手続きに来てからのことを話し始めた。
学校からはそのまま真っ直ぐに帰宅し、父親の晃が帰るまで、母親の愛奈と荷物の整理をしていた。
「この時点では問題は無さそうね」
莉乃がつぶやいた。
「お父さんが帰ってから、回転寿司を食べにいって、その後、車で街をアチコチ散策したんやけど…」
散策中、小高い丘があったので、街の夜景を見るために車を止めて、その丘に上がったことを話すと、クラスメート達がざわつき始めた。
「ちょっと待って。そのときにお社の方に行かなかった?」
黙って聞いていた莉乃も、それが気になり、代表して口を挟んだ。
「おやしろ?お社って、ちっちゃい祠みたいなやつかな?それなら行ったけど…」
暗い夜道を迷ってしまい、細い道に入り込んだ先にそれがあったのだ。
みんなのざわつきが大きくなった。
「そ、それがどうしたん?」
優衣はいけないことをしたんじゃないかと思って、恐る恐る聞いた。
「そこって、心霊スポットだよ。この地域の子は誰も近づかないよ」
その場所は昔から、霊を見たとか、キツネに化かされたとか、神隠しにあったとか、鬼が住んでいると言われている場所だった。足元が悪いこともあって、事故が起きないように親からも近づくなと言われていたのだ。