僕の全てを知ってるオバチャン-2
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その日僕は、母に頼まれて都市部の古書店に本を漁りに行った。
書棚の本の顔ぶれをスマホで報告して、お気に召した本を手にして行った。
(なんでこんなん買うんやろ。ネットで転売でもするんやろか。)
と思いつつ、本で満タンになったリュックを背に帰ろうとすると、駅がエライ事になっていた。
人身事故で運転見合わせになった鉄道の振替で、僕が乗る私鉄にひとが集まっていたんだ。
ふだんガラガラの駅に、下校の時間だった学生たちがいっぱいいた。
僕はリュックを前に抱いて、電車に乗りこんだ。
いつも座れるのが当たり前の各駅停車さえ、動きがとれないほどの混雑。
ようやくまわりのようすを見て、僕は身体が固くなった。
僕のまわりになぜか、女子学生が集まっている。
混雑で、少し手を動かしたら彼女たちの身体に触れてしまう。いや、僕の背中に密着しているのは、明らかに女の子の胸だ。
僕の心の中で、オバチャンの言葉の断片が繰り返されていた。
(女の子にチカンにされてしまうんやで……)
(アンタが捕まっておらへんようになったら、お母ちゃん命縮めてまうんやで……)
混雑の熱気のせいか、だんだん女子学生たちの髪の匂いが濃くなってきた。
僕は初めて知った。
(ムラムラするって、こういう事だったんだ……)