O深夜の訪問-1
今日は天気も良くママ友たち全員が幼児公園に遊びに来た。
真由美、ひかり、恵子、美紀とモデル仲間二人だ。
大テーブルの周りで田中氏のヨーロッパ行きが話題になっている。
「視察している時間は短時間でその他の時間は自由行動でしょ?」
「そうよ。物見遊山の旅行を公費で行っているようなものよ。」
「他の市でもやっていることだから文句は言わないけれど10人は多いわね。」
慌てて恵子さんは否定した。
「今回は公園と学校の視察が目的で結構ハードなスケジュールみたいよ。」
「そりゃ議員たちはそう言うわよ。
美味いパスタを食いに行くんだ、なんて絶対に言わないわよ。」
1人対5人の攻防では分が悪い。おしゃべりから抜けてリビングに逃げ込んだ。
「恵子さん気にしないでいいよ。議員は話題に上ってなんぼだよ。」
「でも美紀さんの言い方はひどいわ。悪意むき出しだわ。」
「もともと君たちは仲が悪かったからね。何かあったら当然突っ込まれるよ。」
「でもあの人みんなの前で夫を落せる自信があるって言ったのよ。
わたしも頭にきてやれるもんならやってみなさいって言っちゃった。」
「うわーそれは危険だな。美紀さんは本気でやるよ。」
「でも夫は大丈夫よ。間違っても彼女を抱くことはないわ。」
「そうかな。男の目で見て美紀さんは素晴らしく魅力的な人だよ。
そんな女が抱けるとなったらたいていの男はダウンさ。」
「でも夫は大丈夫よ。だってだって・・・・私を愛しているもの。」
「美紀さんが口に出して言うからには確実な勝算があるんだよ。
あの人はそういう人なんだ。普段は天然だが男女の事になると天才的に鋭いんだ。」
「万一、万一よ。主人がその気になっても肉体関係まで進む事はあり得ないわ。」
「恵子さんは甘いよ。男と女ってどこでどうなるか分からないし信じられない事が起こるんだよ。
1年前を考えてごらんよ。僕たちがこんな関係になるなんて誰も思ってなかったはずだよ。」
「でもそれはいろんな偶然が重なったからで私たちはたまたまよ。」
「ははははは。君は本当にお嬢様だね。僕の書斎に鍵が掛かってなかったのを
不思議に思わないかい?仮にも1000万円近くの現金が置いてあるんだよ。
まして箪笥の2段目には鍵はついていないんだ。盗んで下さいって言っている様なもんだよ。」
数分間の静寂が流れた。彼女の脳は今フル回転してその時を思い出している。