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【調教 官能小説】

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食事-1

直人からのお礼の連絡は部屋で着替え終えたときを狙ったようにベットに腰を掛けた途端、着信を伝える点滅が光りだしていた。

拝啓 川瀬夏希様
今日はありがとうございます。
楽しかったです。
気軽に話をしてくれる夏希さんの優しさは明日も頑張ろうと思わせてくれる活力になりました。僕はあなたのことを大切にしていきたいと思いますのでこれからも宜しくお願いします。
敬具 青山直人

「堅いわね」

笑顔で読み終えたわたしは携帯に打ち込む直人を思い浮かべその直人に向けて微笑んであげていた。


翌日のダンスのレッスンを終えたわたしは代々木公園に向けてウォーキングをしながら心は直人に向けてしまっている自分を宥めるようにモデルに集中するように身体を磨いていた。
適度な運動はモデルには欠かす事のできない基本そのものだった。まだ21歳とはいえ徐々に迫る衰えに備えて20歳を超えた頃から日常的に身体を磨くことをわたしに課していた。
代々木公園でクールダウンを終えたわたしは麻布にあるボディーケアに通って全身の艶を潤すように時間を掛けて磨き上げその日をやり過ごしていた。
直人からの誘いを待ちながらもその時がくるまでわたしはモデル業に向き合う日常を暮らしていた。
暫くして来春発表予定のイタリア製スカートのモデル撮影を終えてスタジオの控室に戻ったとき大胆なサプライズで直人はわたしを驚かせてきた。


撮影を終えて控室に戻ってみると、鈴のような綺麗に膨らむ真っ白い糸蘭が部屋の側面全てを覆い隠すようにお祝いの差し入れとして埋め尽くされていた。

「ちょっと何これ」

控室でわたしを待っていたスタッフは悪戯な視線をわたしに向けて「夏希ちゃん宛の差し入れよ。でも差出人はないわ」と「誰なのよお」とわたしを囲むように凄い歓声を上げていた。

「わかんないよ」

未発表の新作撮影は限られた一部の人しか知らないはずだった。それでも心当たりは直人以外に考えることはできなかった。

「本当にわからないよ」

わたしはひたすら誤魔化すことしか出来なかった。歓声をあげるスタッフをやり過ごしメイク席に座ってプロのメイクリストに化粧を落として貰っていたとき耳許にそっと顔を寄せて諭すように教えてくれていた。

「昔ね、一度だけ似たようなことがあったのよ」
「本当なの。誰からだったの」

「それはね夏希ちゃんのオーナーがまだ現役だった頃の話よ」

「えぇ。沙也加さんなの」
「そうよ業界では伝説のような話よ」

「それで、誰が用意したの」

わたしは憧れの沙也加さんと同じお祝いを受けて完全に舞い上がってしまっていた。

「それがね、どうやら一人の女性が全て手配したらしいのよ」
「女性、ですか」

わたしは沙也加さんに恋する熱狂なファンだと思っていたが、まさか女性だとは思ってもいなかった。

「その女性はね。オーナーのことを海外に渡った後も当人に分からないように支援していたみたいなのよ」
「何それ。スケールが大きすぎて分からないよ」
「だから伝説なのよ」

そう言って鏡のわたしに微笑んで大人のメイクを落として21歳のメイクに戻してくれていた。

「はい。終わりよ。可愛らしいわよ夏希ちゃん」

そう言ってスタッフの元に戻るメイクリストを見届けて目の前に置かれた一輪のひまわりを見つめながら「直人なのかなぁ」と首を傾げることしかできなかった。

帰りの専用バスに乗り込んだわたしは直人に向けてそれらしく連絡をしてみることにした。

今、撮影終わったところです。来春の新作撮影だったのよ。だから秋頃には雑誌にわたしが載るから良かったら見てね。夏希

これだけを送るのに撮影以上の疲労を感じ疲れたようにスタッフに囲まれたバスの車中で深い眠りに落ちてしまっていた。

疲れた身体を休めるようにベッドに横たわってテーブルに添えた一輪のひまわりを見つめていたときだった。

お仕事お疲れさまです。雑誌の創刊楽しみにしますけど何の雑誌ですか。僕には全く分かりません。笑
青山直人

笑ってしまっていた。

「直人、可愛いいわね」

わたしは直人との距離が近付いていることを認めていた。多分だけど直人はわたしに誠実な好意を持ってくれているようだった。
テーブルに飾った綺麗なひまわりを見つめ本当に恋をしてもよい相手なのかもう一度会って確かめてみようと思っていた。

今週は木曜と金曜がお休みです。
わたし暇なの。ご都合如何ですか。
夏希

送信すると直ぐに返信が届いていた。

空けます。
木曜は天気が良さそうなので海を観に行きませんか。宜しければ9時頃にわたしも一緒にお迎えに伺います。
敬具 青山 直人

「やだ、凄い真面目」

向日葵に向けた笑顔が止まらなかった。


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