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【調教 官能小説】

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食事-1

帰宅して今朝用意しておいた旬菜のトマトとポテトサラダを食べながら今日の疲れを取るように湯船にお湯を張っているところだった。
携帯電話に着信を知らせる青い点滅が繰り返し光っていた。

「誰かな」

連絡したことを忘れていたわたしは直人から届いた誠実な返信に笑顔がこぼれてしまっていた。

拝啓 川瀬夏希様
青山直人です。正直、嬉しいです。
木曜日の16時30分頃に車を迎えさせますので宜しければ横浜のリチャードハイランドでお食事をご一緒できればと思っております。
ラウンジは貸切りにしておきましたので軽装で来てくれると僕も気楽です。
ご都合、良いですか?
敬具 青山直人

「やだ。本気じゃない」

沙也加さんには言ってるのかしらね。そう思いを偲ばせ湯船に浸かりながらその日を待ちわびてしまっていた。

高級セダンは時刻通り16時30分にわたしを迎えるようにアパートの前で運転手が場違いな高級スーツを着こなして深く頭を下げてわたしを待っていた。

これまでわたしに言い寄ってきた多くの男性に慣れてしまったわたしは、本当に軽装のスリムジーンズにパンプスを履いて長袖の大きなチェニックを羽織ってメイクだけはしっかり決めた普段着で後部座席に腰を落として何も言わない運転手を横目に広い車内で長い脚を組んで車窓を流れる横羽線から東京タワーを眺めてその時を待っていた。

わたしは直人に会えることを楽しみにしていた。沙也加さんの弟の直人は誠実そのもので綺麗な笑顔が可愛らしく思い出して微笑んでしまっていた。

「川瀬様、此方で御座います」

フロントに着くなり全てのスタッフが一斉に頭を下げるように迎えてくれていた。

「ちょっと。大袈裟じゃないの」

理解を越えたお持て成しに気おくれすることしかできなかった。
慇懃な支配人に案内された52階のラウンジは誰も居ない静寂に包まれながら本物の鍵盤がラカンパネラを優雅を引き立てるように響いていた。

「此方で御座います」

支配人に案内されるまま席に向かうと直人は照れるようにわたしに手を振って「来てくれないかと冷や冷やしたよ」とあどけなさの残る爽やかな笑顔を向けていた。

直人と向き合ったわたしは沙也加さんの話しは憚れるような気がして、当たり障りのない育ちの話しやモデルになろうとした経緯や行ってみたい海外の話、今目指している夢など普段通りのランチをするように当たり障りのない話をしていた。直人は真面目にわたしの話を聞きながら時には頷き被せるように話題を載せて二人で笑いあって食事を終えていた。

「また、会えますか」と帰り際に屈託なく笑った直人に「いいわよ」と満面の笑顔で笑ってあげていた。

「そうだ、直人さんてお幾つなの」

これだけは聞こうとした事を最後に確認して帰ろうとしたところだった。

「24歳。だから夏希さんとは3つ年上だよ」

驚いてしまっていた。たしかに幼さが残る綺麗な顔立ちだがそこまで若いとは思ってもいなかった。

「やだ。凄い近いじゃない」

食事を終え距離感が近づいたわたしは普段通りに話せるまでになっていた。

「そうなんだよ。どうやら僕はいつも歳上に見られてるようなんだ」

屈託なく笑う直人は24歳の若者そのものが魅せる笑顔だった。24歳で大真面目に食事に誘ってくる大人の行動と可愛らしく満面に笑う直人の笑顔にわたしの心は持ってかれそうになり抑える笑顔で「また今度ね」と手を振ってその場を後にしていた。

高級セダンに乗せられたわたしは今日の充実にうっとりと満足するように綺麗に光る東京タワーを眺めながらこれからの直人との出会いを楽しみに直人から届く連絡を待ちわびるように携帯を握りながらその日をやり過ごしていた。


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