ひとり 応接間で-1
「ただいまぁ〜」
初冬の午後、中学一年の祐詩は いつものように家のドアを開けた。
しかし、母の声も、
「にぃに、にぃに〜!」と駆け寄ってきてくれる二歳の妹、祐寧の姿もない。
祐詩は、二人が親類たちの寄り合いで家にいないことをはっきり確かめると、応接間へ向かった。
応接間に入った祐詩は全裸だった。
祐詩はソファーに寝そべると、手を静かに股間に横たわる「牡の肉軸」に伸ばした。
そして先端を少しつまんで揺り動かし、ほど良く頭をもたげた肉軸を握りしめると、ゆっくり手を上下にしごき始めた。
それは手淫と呼ばれる性行為であった。
祐詩は自分の部屋を持っている。そこに入れば誰にも知られず、好みの画像を眺めながら遠慮なく射精が楽しめる。
しかし、家の中に誰もいない機会があると、祐詩は応接間を独り占めして、目を閉じて手淫に耽ることが秘密の慣わしだった。
それは、その応接間が祐詩にとって「雪の日の想い出」の舞台であったからだ。
〜▲〜
祐詩が小学四年生の二月、彼の住む町には珍しい大雪が降った。
朝から大雪警報が出ていたが、そのころまだ祐詩の家には雪は積もっていなかった。
警報で学校が休みになった祐詩は、ちいさな庭に赤いバケツと赤いボールとでこしらえた「だるま」を置いた。
その赤いだるまが、白い雪だるまになっていく動画を撮ろうとしたのだ。
応接間の窓べに毛布をかぶってうずくまり、雪をかぶって白くなっていくだるまを見守っていると、
カチャリ
応接間のドアが開いた。