きわめて自慰的なマゾ男の手記、あるいは散文詩-12
男は密かに頬を弛ませた。女はここで素顔を晒すことになる。彼女の目元を覆った仮面はもと
より、女が纏った、欺瞞に充ちた精神と肉体のすべての仮面は彼が与える恥辱と凌辱で無理や
り剥がされる。羞恥に充ちた十分な抵抗、苦痛に充ちた充分な喘ぎ、肉奥を蝕む充分な凌辱、
搾り取られる充分な愛液…。そして、苛酷で華麗な服従…。女は彼に服従することによって自
らの仮面の下に潜む性にはっきりとした輪郭を与え、男の奴隷となる悦びの意味をきわめて純
粋に知ることになる。
女は何も知らずにここにやってくる。彼女が手にしたワイングラスの内側には一時的な失神と
脱力感へ導く無臭無色の薬液が塗り込められ、注がれたワインに溶けるようになっている。女
が祝杯のワインを口にしたその瞬間から彼女は彼のものになる。ここで一か月のあいだ女に奴
隷の調教を施し、最後は催眠状態にして檻の柩に入れ、専用飛行機でアラブの奴隷商人のもと
に送り届けることが彼の役割だった。女はその商人が所有する奴隷の巣窟で公開調教され、競
りにかけられ、性的な奴隷女として売られる。男はこれまで何人もの女を奴隷商人に送ってき
たが、彼女たちが生きて日本に戻れたことはない。
奴隷商人から彼に与えられた調教の時間は十分にある。今夜、夢魔―サキュバスは現実のもの
として彼の手に堕ちることになる。
彼はゆっくりと瞼を閉じた。ワインを口にして酩酊状態になった彼女の顔から仮面を剥ぎ、立
たせたまま天井から垂れ下がる鎖でしなやかな手首を吊りあげ、足首を床の鉄枷に拘束する。
男は彼女の潤んだ唇を指でなぞり、衣服の上から柔らかくふくよかな胸の膨らみを掌で鷲づか
みにし、乱れたスカートから覗いた太腿の肉肌の極みに手を這わせ、恥丘のふくらみを弄る。
やがて意識がはっきりとしてきた女は自らが置かれた現実を知ることになる。そのとき、すで
に彼女は身動きはできない。熱い羞恥に充ちた彼女の苦悶の素顔を眺めながら、衣服と下着を
ナイフで少しずつ切り裂き、剥ぎ取っていく身震いするような瞬間…。手始めは全裸にした女
のあらゆる窪みと突起の湿り気と柔らかさと熟れ具合を淫靡な指でたっぷりと吟味させてもら
うつもりだ。
これからおとずれる、ぎらぎらとした覚醒と悦楽の瞬間が男の奥底に凄まじい疼きとなって
蠢きはじめていた…。