36歳の婚活 本編7頁目-1
ダイニングの椅子で暗闇に怯え憔悴しきったわたしに向かって夥しい光がリビングに一斉に溢れだしていた。暗闇に視力を慣らされたわたしは眩しい光に適用させようと目を細め扉を開いた人を確かめていた。
扉を空けて辺りを見回す人影は素っ裸で不気味な股間だけが黒い影のように照らされてるようだった。
「やだ。あれは直人かしら」
ローションでカピカピになった股間の陰毛を肌に張り付かせた直人が不気味に辺りを見回してるようだった。
「あなたは一体どういことしたらそんな格好になるのかしら」
完全に直人を見下したわたしは、呆れる口調で直人に向かってそのバカバカしい格好に嫌悪感を込めて馬鹿にするように言い放っていた。
「やあ。そこに居たんですね」
「ふざけないでよ。今何時なのよ」
「時間ですか。見ての通り時計は置いてないですよ」
「全然話にならないわ。あんた馬鹿じゃないの」
噛み合わない会話に飽きれ光に照らされたパネライを確かめ20時を少し過ぎている時刻を確かめていた。
「ちょっと。帰してよ。旦那が帰ってきてしまうわ」
本当に旦那が帰宅する時刻が近づきわたしは急激な焦りに迫られていた。
「奇遇だなあ。あなたのことを忘れてたから早く帰してあげようと戻ってきたところですよ」
不気味なカピカピの小粒のように萎んだ股間を無様に陰毛に絡ませて肌に張り付かせる気持ち悪い姿にうんざりしながら「さっさと帰してくれるかしら」と即答していた。
「玄関にハイヤーを呼んであります。どうぞ、玄関はこちらですよ」
ふざけた格好の直人は臆面もなくわたしに帰宅を促していた。
「ちょっとどいてくれるかしら」
急ぐように長廊下を進み石畳みに揃えられた一足の美しいわたしのパンプスに脚を嵌めながら「もう二度とわたしの前に現れるないでくれるかしら」と吐き捨てるように呟いていた。
「あなたにこんなに早く会えるとは思ってもいませんでした。よかったらまた会ってくれませんか」
だらしない格好の直人は大真面目にわたしに甘えるような笑顔で不気味な下半身を忘れてるように誘っていた。
「無視よ。無視」
わたしは心で呟いてさっさと帰ろうと玄関を空けて外にでようとしたときだった。
「そうだ。今日のリビングの撮影成功してましたよ。映像が捉えたあなたの行動は高級そのもので、あなたの美しい容姿との矛盾が卑猥過ぎて僕はどうやらあなたに恋をしてしまったようです」
唖然と直人を振り返りうんざりした苦笑いを見せてエレベーターに乗り込んでその場をやり過ごすことしかできなかった。