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没作品 硝子の心 処女作
【若奥さん 官能小説】

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36歳の婚活 本編2頁目-1

扉の前に立ち開かっていた沙也加はその時が来るまで全く動じる様子がなかった。

「いなんじゃないかしら」

何の気配も伝えてこない扉とリビングに向かって「帰りましょうよ」と36歳のわたしは173cmの細身に15cmのクリスタルピンヒールで聳え立つ沙也加に向けて促していた。沙也加は何も言い返してこなく首を傾げたまま腰に手を添えてその時を待ち続けるようだった。沈黙に耐えられないわたしは沙也加に気を紛らわせるようにそもそもを問いかけていた。沙也加は何時扉が開いても対応できるかのようにその姿勢を崩さずに淡々と答えてくれていた。

「直人って何者なの」
「見たとおりよ。莫大なお金に囲まれその使い先の無くなった哀れな若者よ」
「直人とは何時出会ったの」
「わたしが27歳の時よ。その時直人は高校を卒業したばかりだったわ」
「わたしはね。イタリアでプロのモデルとして輝いていた時なのよ。直人は高校卒業と同時にクルーザーを買い取ってモナコに向かう途中にポルトフィーノの港に寄港してお金持ちだけを集めた壮大なパーティをしたのよ。その時にわたしは日本語通訳としてロイヤルスイートルームで初めて直人に出会ったのよ」

想像を越えた話だった。クルーザーを買い取ってモナコに向かうには一体幾らのお金を必要とするのかわたしには全く理解できなかった。

「直人はねプライベートスイートルームで挨拶したわたしにキャリーケースにびっしり詰まった札束を見せて「宜しくお願いします」と19歳の若者が27歳のわたしに「そのお金は自由にしていいですよ」とキャリーケースをわたしに渡して言い寄ってきたのよ」
「桁が違う世界を魅せられたわたしは舞い上がって直人に抱きついてしまったわ。海外で暮らしていたわたしには十分すぎる話だったのよ」

唖然としてしまっていた。分からなくない話だった。キャリーケースに詰まるほどの札束は億単位になるのだろうかと思ったけど扉に立ち開かる沙也加の背中を見て何も言い返せなくなってしまっていた。

「最初はね普通に通訳だけをしていたのよ。直人の変わりにお客様のお持て成しをして直人の代わりに通訳してあげる。それだけだったのよ」
「最初はね何て楽な仕事なんだろうと浮き足立って19歳の何も分からない直人を誰にも取られないよう必死だったわ。でもね豪華なお金持が開くパーティはね1週間くらいは平気で続けるものなのよ」
「わたしは直人に与えられた豪華なスイートルームでキャリーケースを開けて帯の札束を掴んでモデルとしての最高の成功を手に入れたように舞い上がってしまっていたのよ」

沙也加が溜息をこぼすように肩をすぼめて扉に向かって美しい身体を魅せつけるように背筋を伸ばして姿勢を直していた。

「パーティが終わって帰ろうと身支度を始めたわたしに19歳の直人は子供っぽい仕草で最後の食事くらいは二人でどうですかと誘ってきたのよ」
「何も知らない当時のわたしは、まだあどけない直人を断る理由なんて何にもなかったわ。だから食事前に買い物に行きましょうと言った直人に何の躊躇いもなく付き添い高級ブランド店を廻ってわたしの身体に見合う衣装を一生懸命選んでる直人が可愛らしく見えてしまったほどわたしも直人も若かったのよ」
「当時のわたしは27歳のプロのモデルよ。高級ブランドの良し悪しはわたしにとっては日常のように知っていたわ。高額なドレスは日常のように着慣れていたしその値段のことも詳しく知っていたわ」
「それでも直人は一生懸命選んでVIP用ラウンジから着替えたわたしに向かって「綺麗だなぁ。本物のモデルみたい」と無邪気に見惚れるように可愛らしい笑顔でわたしを迎えてくれたのよ」
「素敵だったわ。あの時だけは」

沙也加は腰にあてた手を降ろし腰の後ろで両手を伸ばして身体を解すように肩を宥め片脚を浮かして筋肉の緊張を解してその体制を維持するように努めているようだった。

素人のわたしが見てもプロの仕草だった。本物のモデルだった沙也加だから魅せることができる圧倒的な輝きだった。

「そのあと二人でクルーザーに戻って食事をしたのよ。靴先からイヤリングまで全てを高額な高級ブランドで揃えてくれた幼い直人にわたしは満面の笑顔で見つめてあげて二人だけの食事を楽しんでいたのよ。でもね食事を楽しんでいるその時、実は既にクルーザーはモナコに向けて出港していたのよ」

「そこから最悪の毎日が始まったのよ。モナコまでは10日間もかかるのよ。逃げ場のない客船で治まることを知らない19歳の発情をわたし独りが全てを受け入れることになるのよ。逃げたくても海の上よ。わたしは執拗に陵辱の限りを受け続け発情するたびに何処だろうと関係なく犯される毎日を過ごすことになったのよ」

肩の力を解すように片脚の力を緩め小さな顔を傾けながら「酷い毎日よ。分かるかしら。千佳さん」と力無く呟いていた。

わたしは何も言葉を返すことができなかった。


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