奪われた幸せ-2
病院何て大嫌いだ、いや好きな人何て居ないと思うけど。「ご家族の誰かが」刺されて手術室に入れられ、その近くで待つ他の刺されてない二人が、重い表情で無事を祈りつつ座って待っているその場所に早足で向かう私と彼女。
タクシーで目的地へ向かう間もずっと手を握っていてくれた彼女、ちなみにこんなにも大勢の人を深く傷つけたアイツは犯行の途中運悪く人が通って、一人しか狙えなかったと警察は考え、要するに全員殺してやろうと思った訳か。その通行人の仕事帰りのスーツを着たサラリーマンの上司と部下か、その若い男性と中年男性が逃げ去るアイツを追っかけて取り押さえてくれたとか。
「着いたわよ。」
「っ!!」
思ったよりも早く着き、横に目をやると確かに手術中の赤いランプが、そしてその横には
「おばさん…。」
「………。」
返り血を少し顔に浴び、深刻そうに弱弱しくも気性に振る舞う彼女ただ一人の姿が。
一瞬私の頭にとんでもない悪魔が浮かんでしまった、どうして彼ではなくおばさんなのかと…、「なんだ…」と思わず口が開きそうだった。
「!若葉ちゃんに伊吹さん…。」
私たちの存在に気づき、驚く。巴ちゃんが先に歩みより。
「大丈夫ですか?」
「え、えぇーでも彼が…。」
彼って?
私は神を呪った、さっきの野次馬といい何でこんなに引っ張る訳?
「あ…あのあの、か、彼って。」
溜まらず声を出し、おばさんに聞くも小声で聞き取れず目を丸くする。
そんな私に見かねて巴ちゃんが代わりに尋ねる。
「ねぇおばさん、アイツに刺されたのは誰?」
「……。」
聞かれるもすぐには答えず、床に視線を落とし。
「今、あの手術室に居る患者さんは誰なの?」
「……。」
早く答えてよ!
もう全身が震えてどうかしそうだ。
「……うっ、うう。私は一体何の為に今まで頑張ってきたのっ!?」
耐えきれず質問には答えず、吹っ切れるように両手を顔につきわーと泣き出す。
そんな、まさか。
嫌、嫌だ嫌だっ!!