第24話『生物恥丘奇行』-1
11月○日。
世間が久しぶりに騒がしい。 こないだの法律は、どうやら私が想像した通りらしくて、
指名されたらどこの誰とも分からない男とセックスさせられて、ひたすら1年間胎教に打ちこまされるらしい。 それでもって、無事に出産したら子供を取り上げられて、元の居場所へポイと放り出されるそうだ。 なんだろう……ホント、これってなんなんだろう? 確かにすごくバカにされてると思うし、酷いし、悔しいけど……そこまで騒ぐことかっていうと、あたしにはそうとは思えない。 ただ単に『あたし達って酷いことされてるなぁ』『無茶苦茶だなぁ』って思うだけで、別に、そうしろっていうならそうするだけ。
お母さんも騒がしい。 ご近所が集まって、彼方此方で井戸端会議をしている。 女性的には『自分たちが子供を産む道具にされる』のだけは、それだけはどうしても許せないらしい。 子供は神聖で、自分の身体より大切で、女性にとっての聖域で……子供を産んだことが無いあたしには、どうしても理解できない感覚だ。 トイレで毎日オマンコを拡げさせられ、生理の度に報告させられ……とにかく色んな無茶苦茶がまかり通っているんだから、『子供くらい別にいいじゃん?』みたいにならないんだろうか? まあ、ならないから騒がしいんだろうけど。
男連中――『2ch』で女が虐められてるのをみて、ニヤニヤしてるような成人男性に、あたしは敬意なんてこれっぽっちも感じてない――も騒がしい。 こないだなんて近所の男連中がウチに集まって、誰彼無しに文句をいってた。 『男が女を守れていない』だの『男としての尊厳が一線を超えた』だの『軍が占領してから何もかもメチャクチャになった』なんて、憤慨してるみたいだけど……あたしに言わせれば『何を今更いってんの?』だ。 アンタらに尊厳なんて、少なくとも、あたしはとっくの昔に感じてない。 感じて貰えてる、なんて考えてるとしたら、それこそ最高の噴飯モノだ。
『子供』『出産』が、すっかり一大イシューになっちゃって、彼方此方で耳にしすぎるせいか、『PTC(ポニー・トレーニング・センター)』でも『出産練習』をやっていた。 もちろん人間じゃなくて(実際は人間なんだけど)、ポニーとしての出産だ。 あたし達は性行為自体が厳禁になってるんで、出産する機会なんて『強制出産』以外あるわけなくて……もしかしたらポニーには例外規定でもあるんだろうか。 ともかく、真っ新な藁をしいた特別仕様な畜舎があって、そこに集められたポニー達が出産のイメージトレーニングをさせられていて。