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《見えない鎖》
【鬼畜 官能小説】

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〈二人だけの宝物〉-23

(死…死ぬって決めたの……死ぬって……き…決めた……)


涸れる事を知らぬ涙……だが、いま溢れてくる涙はとても痛かった。
まるで頭部全体の血管が沸騰しながら雑巾のように捩れ、涙腺を焼き付かせながら絞り出てくるようにジリジリと目頭に激痛を伴わせる。


「………!!??」


最終手段に迷う花恋に、あの曲が聴こえた……それは英明からの着信を告げる曲……花恋は鋏を放せずに左手でスマホを取ると、そのまま沈黙した……。


(フラれたって分かったら……ハッキリしたら、もう思い残すコトは………)


それは迷いを決意に変える為の、壮烈と言ってもいい覚悟の通話だった……。


{今日は俺が悪かった……ごめんね……なんかアレだね?最近の俺達って謝ってばかりだよね…?}


英明の緊張は、スマホのスピーカー越しにでも伝わってきた。
少しでも雰囲気を和らげれればとの思いも、その声色から分かった。


{あの……応えたくないならそのまま聞いてて……俺さ、花恋が何か悩み事があるのは気付いてたんだ……でも、それは俺には言えない事なのか、それとも俺が頼りないから黙ってるのか……お、俺なりに…なんて言うか……悩んでたんだよね……ハハ…なんか言葉が可笑しいかな…?}


花恋は沈黙を守ったままだ。
痛い涙は止まらず、右手は鋏を放そうともしていない……。


{だからさ、花恋の悩みが解決するまで、ちょっと距離を置こうか?あの…お互いに楽しく笑いあえるようになるまで、デートとか控えようって意味でさ……もう俺のコト嫌いになってるかも知れないけど、俺は花恋から離れないから。最初の頃の花恋に戻れるまで、俺はずっと…ずっと待ってるから……}

「ッ…………………」


花恋の沈黙は変わらない。でもそれはさっきまでの〈沈黙〉とは意味が違うものだ。


分かってくれた。
誰にも告げられない苦しみを英明は触れないようにして包み込み、そして傷付いた花恋に『俺は変わらない』と力強く宣言してくれた……。


{言えない悩みを聞き出そうとしてた俺が悪かったんだ。花恋を苦しめてるって気付けなくてゴメン……でも、いつでも相談してくれよ?彼女の力にもなれない男なんて俺は嫌だからさ……ちょっと格好つけすぎたかな……?}

「ひ…んうッ!うん…ッ…うん…ッ!ありがと……」


花恋が思う以上に英明は強い男性だった。
こんなにも素敵な男性を彼氏に持てたのに、あんな兄弟と一緒に居るせいで…………いや、もうそれを考えるのは止めておこう……。



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